家でなくなった家 2
母は競馬が大好きでした!
賭けたりはしませんが、大きな大会の時は欠かさずにTVを見ていました。
そういう日は何かしらの用事や遊びに誘っても、
「わたしは競馬があるから、いかない!」
の一点張りでした。
サラブレッドの姿かたちが大好きで、パドックが大好きでした。
武豊が大好きで、そのプレイスタイルがとても上品だといっていました。
今、TVで母が競馬を見ている姿は見ません。
今日が何曜日で、何の大会があるのかという把握が出来ないのです。
先日、偶然にやっているのを発見してTVをつけたのですが、消されてしまいました。
競馬、見ないの?と聞くと
「う~ん、あれは流行りに乗っただけだったんよ」
となんとなく適当っぽい答えが返ってきましたが…。
でも、TVで競馬をしているのを見ると母が好きだったことを思い出しますし、なんとなく結果も目を通します。
元気だった頃の母の記憶は、私の中でまだ生きています。
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~~ 家でなくなった家 2 ~~
なるべく冷静に話そうとつとめました。
「何言ってるの?お母さんも向こう(関東)に行くんだよ。連れに来たんだから」
「えっ?なんであたしが行くの?どこにも行かんで?」
「迎えに来てくれと言ったのはお母さんだよ。一人で行けないから来てと言われたから、仕事を休んで連れに来たの」
「ええっ!?そんな事言ったかな?」
心底、驚いています。
「ゆっくりなんてしてられないでしょ。三日しかないもの。準備をしないと」
「は?何の準備?」
「引越しの準備!」
「誰の?」
「お母さんの!」
「はあ?なんで!?」
ショックでした。
やはりまずい。
これはまずい。
全く話がつながらない違和感に加えて、扉を開けた瞬間から、住み慣れた実家ではない違和感がもやもやと漂って来ました。
気配も、様子も、ぜんぜん違うのです。
電話越しと違い、母とこうして顔を付き合わせて話すと、その違和感は尋常ではない感じです。
こちらで暮らす話も、ホームの話もかなりつめて話したつもりでした。
この一ヶ月の説得を全く覚えていない?
膝の力が抜けるほどがっくりきました。
ショックはまだありました。
家に上がってまず目に付いたのは、キッチンに放置されたたくさんの食材でした。
腐ったり、しなびたり。
ありのたかっている人参、腐ったを通り越して黒くひからびたじゃがいもなどが転がっていました。
背中が総毛立ったのをよく覚えています。
何度も感じることになるのですが、それは
「汚い」「普通じゃない」「やばい」とか、色々言葉を捜しますが、いちばん当てはまるのは
「気味が悪い」
という感情だと思います。
幽霊に会ったような気分、とでも言えばいいのでしょうか。
(わたしは霊感ゼロの人間です)
廊下を歩くと足の裏が黒く汚れました。
キッチンを掃除している気配もない。
普通の部屋の掃除もしていない。
冷蔵庫の中にも外にも、賞味期限切れの食品が山積みになっています。
たとえ夜の10時であっても、疲れたからとそのままには出来ませんでした。
夜からごみ袋を取り出して、捨て始めました。
→→ 家でなくなった家 3 に続く