お友達からも　２ - 今日もまた違う一日

父は亡くなる前には、痩せて枯木のようになっていき、心筋梗塞であっさりと亡くなりましたが、母は今もつやつやしています。
どこかで聞きましたが、体の元気な人は脳の老化が早く、逆に体が弱っていく方は、最後まで意識がしっかりしている傾向があるのだそうです。

昨日、母がふと
「私ね、おばあちゃん（ひいおばあちゃん、母の親）が亡くなったのを見てないんよね。いつの間にかいなくなってたわ。死んだのも知らんかった」
と言います。
私が黙っていると「そうよねえ？」と重ねて同意を求められます。

皆さん、こういう質問にはどうしているのかなあ、と思います。
私はやっぱり、「そうだね、そうだね」とただ同意して流すことは出来ないのです。
「そんなはずないよ」
と答えると黙ってしまいました。

そして「まだまだ元気でおらんと。ようし、がんばるぞう」と言います。
「お母さんてまだ死にたくないの？」と聞くと
「うん、ぜんっぜん死にたくない。生きていたい」
と答えましたので、二人で笑いました。
まあ、元気でいてくれるのは有難いことです。
まだ私のことは忘れていないみたいですし。

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おばあちゃんが認知症になったお話　→　はじめから

～～　お友達からも　２　～～

お友達のうちから帰ると、
「どうかの、お母さんは」
けいちゃんおじちゃんから、心配して電話がかかってきました。

「もう絶対に、断固連れて帰ります！」
昨夜、おじちゃんのうちをたずねたことの記憶が母からなくなっていたことを話しました。

「おうよ、電話の様子がおかしかったからのう」
おじちゃんもここに来て、母の様子が本当におかしいことを理解してくれはじめていました。
「私だって、こんな状態になってるなんて思わなかったよ。通帳事件とご近所さんからの連絡が重なったの」

おじちゃんははじめて、その時のことをはっきり話してくれました。
「お母さんのう、途中でつまづいて転んで、こう…手を付いてな、通帳がバーッと床に散らばったんや。みんな見とってのう、行員さんとわしとで抱えて起こしたんやが、それがまたショックやったんやろうな」
母から聞いたより、おじちゃんの説明だと、まるで目に見えるようでした。
「その時に、盗られたとか何とかぶつぶつ言っとったわ。こりゃあおかしいなと思うたんやが…そうやのう」

通帳なくしたこと、銀行へ行った日にち、転んで通帳をばらまいてしまったこと、すべて辻褄は合っています。

おじちゃんは決して母を悪くは言いませんでした。
もともと決して悪く言わない人です。
だからこそ、口を濁すような困った口調からかなりの迷惑をかけたことは推測できていました。

そして最後に意を決したように
「お母さんにはお前しかおらんのじゃけ、もう連れて帰り！そうせい！そういう時期じゃ！」
と言いました。

だからずっと言ってるじゃないか～～～～！(笑)
おばちゃんの方がそのあたり、把握するのが早かったです(笑)
やっぱり実の妹ですね。
でもおじちゃん、何から何まで本当にありがとう。

電話を切って、とりあえずうちに送るダンボールに普段着をつめるため、服を調べました。

すると母が、
「それよ、服が何もないんじゃわ」
と言います。

椅子にかけられている服を一つ一つ開いて行くと、普段着ている服のようです。
それを見て、
「あった、あった！」
　↓↑
「最近服がないんじゃわ」
と言うことが変わります。
もしかして、服の始末もわからなくなっている…？

通帳はずーーーっと、出したり入れたりしていました。

馴染みの運送屋さんがやってきました。

「そうね、奥さんついに引越すんね。長いことお世話になったからなあ、そうかえ、そうかえ」
「運送屋さんはお元気でお変わりなく」
「おうよ、まあなんとかまだやれとるがなあ」

小柄ですがしっかりした方で、ひょいひょいと運んでくれます。

一通り荷物を出して、家のごみもかなり片付きました。
ごはんは外に食べに行きました。
車であちこち母を連れ出してまわります。
家に帰って、リビングでさらに最後の片づけを探していると、母が固い顔をしていました。