閑話 めがね
暑い毎日が続きます!
「おばあちゃんお待たせ~」
おばあちゃんの部屋に入って、あまりに暑いので眼鏡をはずして汗を拭きました。
「持って来たよ~お弁当食べて」
「お弁当どこ?」
「机の上に置いたよ。お茶を入れるから座って、先に食べて~」
食べるのを確認しないと、お弁当を冷蔵庫に入れてそのままにしてしまいます。
忘れてしまうことはもう治らない、どちらかと言うとどんどん進行していくのだということがなかなか受け入れられません。
子供を育てていく中でも自分のことにしても、頭の中で病気というのはいずれ良くなるものという感覚があります。
まだ致命的な病気を知らないからなんだと思うのですが、うちは父も心筋梗塞でしたのでほんとうにいわゆる「ピンピンコロリ」というものでした。
闘病生活をあまり知りません。
「忘れてしまうのが普通だってこと、なかなか慣れないな」
とつぶやくとおばあちゃんがひきとって
「そうよ当の私だって慣れないんだから!」
と言います。
そんなところだけ物の分かったような言い方をするので笑ってしまいました。
施設からアナウンスが入って車を駐車場から動かしてくれとの事です。
「あー行かなきゃ!おばあちゃんごめんね。ご飯ちゃんと食べてね」
途中でメガネがないことに気が付きました。
そうだ、さっき外したわ!と思って引き返しました。
おばあちゃんの部屋を探します。
私が眼鏡を置きそうな所にどこにも眼鏡が見当たりません。
「大変どうしよう、見つからない!私どこに置いたっけ」
バタバタしながら探しているとおばあちゃんもあちこちを探してくれます。
キッチン、レンジの上、ベッドの上、テレビ台、おばあちゃんの机、床の上まで。
本当に見つからない~~!
大変、私の方がずっと認知症だ!
「ここ!」
おばあちゃんが本棚の真ん中をきゅっと指さしました。
おばあちゃんの他の眼鏡に紛れていました!
透き通ったガラスが重なって、およそわかりそうもないところです。
「よく見つけたね~!!お母さんありがとう」
と言って大笑いしました。
若い頃の母は、本当に鋭くてさとい所のある人でした。
人の見ていないところもよく見ていて、痛いことも言うけどよく分かっていて、母がこうだよと言ったことは大抵そうなるというような面を持っていました。
今こうして物忘れは多くてちょっとそばに置いたお弁当も忘れてしまうような状態ですが、やっぱり昔のおばあちゃんらしいところが残っている!
鋭いところは本当に鋭い、と思ってなんとなく嬉しくなりました。
母の片鱗を見ることができて今日は嬉しく帰ることができました。
まだどこかで、昔の母の面影を探しています。
オムそばちゃんか消しゴムタワーをつくりました。(特に意味はありません)
→→ 逃走劇 3 に続く
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