逃走劇 5
「もう関東に引っ越して15年を過ぎたんだから、そろそろこの地域の人といってもいいぐらいだよ~」
とオムレットくんが言います。
それでも、どうしても切っても切れない昔ながらのクセがあるときがあるなあと思う時があります。
オムレットくんは東京生まれの神奈川育ちですが、おじいちゃんが岐阜の方だったらしく、小さい頃はよく岐阜で遊んだようです。
その時の懐かしい味があるようで、ネットで一生懸命探していました。
「これだ!!」
おふくろ…ではなくて、おやじの味、の決定版らしいです。
くるみごへいたれです。
これを買って、オムレットくんが五平餅を作ってくれました。
もち米ではなくて普通のごはんをすりばちでつぶして、平らにして串に刺します。
ごへいたれを塗ってオーブンで焼いていました。
(串は濡らしてアルミでくるんでいました)
とても美味しかったです!!
~~ 逃走劇 5 ~~
やっと母をうちの方に戻るホームまで誘導できました。
あれほどしゃっきり歩いていた母ですが、帰る時はゆっくりと慎重に亀のような足取りでした。
私も転ばないように腕を取りました。
「仕方ないよ、帰ろう」
「どこへね?」
「うちだよ!」
「あんたのうちね?」
「そう!!」
ゲッソリしていましたが、とにかく腹を立てているので、言い方もきつくなってしまいます。
くるみくんと私で、間をはさんで歩きました。
くるみくんも怖い顔をしています。
やはり急ぎすぎたんだろうな。無理矢理、思う通りに進めようとしたのが悪かったのか。
でも普通にしていれば!
今頃は新幹線の中だったのに!!!
一緒に帰るって言っているのに!!
また腹が立ってきました。
自分で自分のチャンスをつぶしたんじゃないの!
仕切りなおすとなるとまた大変だろうな、と思いました。
施設には引越しの日にちも決めて言ってしまったけど、家具がないので施設に寝泊まりするわけにもいかない。
こうなると、仕事中にお留守番を頼むのも怖い!
約束していたけど、義理実家の方には行けないか…。
私が残って母の面倒を見るしかないんだろうな~。
子供たちという緩衝材がないと、どうなってしまうのか恐ろしい気がしました。
義理実家にお世話になる間の子供たちも心配です。
くるみくんやオムそばちゃんは、パパが優しいので若干、ナメている所があります。
課題や宿題も、私がやかましく言わない限り絶対にしません。
オムレットくんは、いくら言っても
「大丈夫だよ~。少しは遊んだ方がいいよ~」
としか言いません。
で、私が「キー!!!」となります。
電車の中で鬱々としていました。
あんなに電話をかけまくって準備したのになあ…。
いつもこの乗り継ぎもある関東と実家間の遠い道のりを、一人で行き来していた母だから、こんな行動力があるんだろうけどなあ…。
わがままだと言われるし痛いことを言いもするけど、行動的で社交的。
最初は
「とても行ききらん、あんた迎えに来て!」
と言ってはいたけど、いざとなると小田原まで行けるのはやっぱり、体が覚えていたんだろうな…。
あれっ?
ぼんやりしていたのですが、急に我に返りました 。
お腹がきゅうっと締め付けられて、足ががくがくしました。
「くるみくん?おばあちゃんどこ?」
「えっ?」
母がいません。
「はーーーー!!??嘘だろ!!??ばあちゃんいねえ」
「えええええ!!!???どこに行っちゃったの~~~!!!???」
→→ 逃走劇 6 に続く
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