ひとりで 3
いつも買っている雑誌の話です。
レタスクラブも読みますが、暮らしの手帖が割と好きでよく買っています。
こういうのんびりした暮らしにとても憧れています。
…現実は…。
仕事と子供、仕事洗濯掃除。
料理はつねに簡単なもの。
そしておばあちゃんの繰り返しです。
おばあちゃんのえはがき
ニコラス・ファン・デル・ヴァーイ「アムステルダムの孤児院の少女」
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~~ ひとりで 3 ~~
真っ先に転げ込んだのが仏間だったのは、やはりひとりでは嫌だな、という気持ちがあったのかなと思います。
仏間にはお父さんがいる、という意識がありました。
しかし位牌は持って行ってしまっていてありませんでした。
ふと見ると、仏壇の下の扉がちょっと開いています。
ここにも何か入っていたのかな?
扉を開いて中をさぐると、アルバム類がたくさんあります。
その一番上に、何か古ぼけた茶封筒の書類が真上に乗っていました。
出してみると、土地家屋の権利書です。
あっけにとられてしまいました。
これは、おばあちゃんを連れて行った時にも最後まで一番探していたものでした。
探しても探しても見つからなかったので、悩みの種の一つでした。
こんな時にこんな風にあっさりと見つかるなんて…。
オムレットくんに電話しました。
「家に着いた。おばあちゃんどうしてる?」
「大丈夫、機嫌よく普通にしてるよ~!」
どういうことなんだってばよ。
翌日は引越しの準備と荷物の仕分けでてんてこまいでしたが、母からは頻繁に電話がかかってきました。
オムレットくんやくるみくんによると、母は帰りたい帰りたいと繰り返していたと言います。
(ごめんお母さん…)
良心がちくちく痛みますが、どこかで「仕方ないよ!」と思っている自分もいます。
私と電話をしている間は落ち着いています。
「ごめんねりきちゃん。苦労かけるね。ありがとう。これこれの荷物を送って。これはいらない!捨てていい」
具体的に指示までしてくれます。
支度ははかどりました。
引越し業者さんに頼んで、荷物を出してもらった後の家は、急にさびしく感じられました。
けいちゃんおじさんは様子を見に来てくれましたし、おうちにももう一度たずねました。
おばちゃんは、じいっとテレビを見て動きません。
「あんな感じなんや。とにかく気力がない。」
はじめてそんな話を聞きました。
弱った声で「どうしたもんかのう、弱ったのう」と言っていたおじちゃん。
本当にしっかりした方だったのです。
頼もしくて、みんながおじちゃんを頼っていました。
おばちゃんは明るくて包容力があって、母には怒られることでもここでは自由にさせてもらえました。
そんなおじちゃんが弱音を吐くなんて、よほどのことです。
おばちゃんは足元もおぼつかなく、ぐったりしていましたが、さようならを言うと涙ぐんで
「もうねえちゃんには会われんのかねえ。会われんやろうね」
と言います。
安易に来て欲しい、連れて帰るとも言えなくて、こちらが切なくなってしまいました。
最後に食事に行ったときにはあんなに喧嘩していたのに。
やっぱり、姉妹だからこそです。
本当に次に会えるのはいつになるんだろう。
なんとなく、そこで考えるのをやめました。
→→ ひとりで 4 に続く
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