家での母 5
昔の写真をあさっていたら、一年ごとに桜の写真が出てきます。
毎年、桜は必ず撮っていたんだなあ。
でも今は7月だから…
7月の写真を見ていると、朝顔の写真と前後して生まれたばかりのオムそばちゃんと遊ぶ元気な母の写真が出てきました
せつないです。
~~ 家での母 5 ~~
翌日、母は騒ぎなどまるで忘れたような顔をしています。
こちらもさすがに、一喜一憂して感情を乱されるのは無駄だ、くらいは学習をしました。
この日から、二重鍵を必ずするようになりました。
下手にガチャガチャするとロックがかかってしまうため、子供たちが開けやすいようにしていたのですが、きっちりしめました。
子供たちも幼児の頃よりは大きくなっていたので、説明をしました。
(この説明をしている時、悪い顔をしてものすごく楽しそうでした)
内側だと、ぶらぶらして開けるのにもちょっとコツがいります。
それからも何度か
「あれ、開かない。これ開かない。開けて!!」
という騒ぎは起きましたが、この翌日はとても普通でした。
母と二人で、施設の契約をしに行きました。
こちらはゲッソリしています。
昨日の疲れと不安で、いつ走り出すのではないか?と顔色をうかがいますが、母はぴかぴかして綺麗な顔をしています。
そしてご機嫌です。
ホームではしっかりと入居のための書類を記入しました。
ですが、何度も同じことを聞きます。
「これで契約、印鑑を押してお返し致しますので」
若い感じのよい所長さんと、よろしくお願いしますとご挨拶しました。
そのとき、帰り際に、
「何度か家から飛び出して困っているんです。こんなに普通なのに…」
とお話しました。
「…?そうなんですか。ぜんぜんそうは見えないのに」
所長さんが、はっとした顔をした気がしました。
帰ってから母は、
「あんた、あたしの子どもやね?」
と何度も確認します。
認知症がどこまで進んでいるのか、中途半端な状態を「むらがある」という言い方をしますが、正気(?)への戻り方も急激です!
すごく普通だったり、常人より鋭かったりする時もあるので、変化の幅がありすぎてむらという言葉におさまりきれません。
こういう人であり、こういう行動を取るとある程度わかっていれば、予測もできるし心の準備もできるのに…。
すごく振り回されてしまいます。
それが疲れる原因の一つであると思いました。
「契約をしたから、お祝いに食べに行こう」
子供を置いて、最近出来た近所のお店に二人で行きました。
ステーキハウスで、なかなかのお値段がします。
母はステーキが大好きです!
疲れた時はステーキを食べるのが習慣でした。
高いお肉を少しだけ買って、味わって食べていました。
そこのステーキハウスはその頃開店したばかりで、まだすいていました。
(今は大賑わいで予約がなかなか取れません!)
母はとても喜んでワインを二杯のみ、とても幸せ、と繰り返していました。
「ああ幸せ、とても幸せ!」
「良かったね」
そして、こんな事を言いました。
「あの家を飛び出して帰ろうとしてしまった時ね」
「え…うん!」
(え?覚えてる!?)
→→ 迷い 1 に続く
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