馴染むために 1
一時期、オムレットくんが明太子パスタにはまって、毎週明太子パスタという時期がありました。
コストコで明太子スティックを見つけてしまったのです。
これは本当に楽です。
バター醤油で味付けして、明太子スティックを交ぜるだけ!!
オムそばちゃんが爆発しました。
「わたし明太子あまり好きじゃないの!!!!たまには別のが食べたい!!!!」
オムレットくんもくるみくんも、この子には本当に弱くて、私がダメということでも許してしまいます。
あっという間に明太子パスタが食卓に出なくなりました。
「こんなに余った明太子スティックどうするの~~!!」
「明太子ポテトサラダとか、明太子トーストとか...」
そんなに大量消費できるわけでもなく、大量の明太子スティックはしばらく冷凍庫に鎮座することになりそうです。
~~ 馴染むために 1 ~~
忘れてしまうと思いつつも、かみ砕いて最初から説明しました。
「ご近所、親戚、お友達が、皆こちらに来て良かったと言っている」
「黒い三人の男がここに連れて来たのではなく、母と私とオムそばちゃんの三人で新幹線で来た」
それで、母に聞いてみました。
「もっと少人数で集団生活したり、多めの人で見てもらえるグループホームの方がいいのかな?」
母は集団生活、という言葉に敏感に反応しました。
「いや、ここは悪くない。ほかに行くぐらいならここがいい」
「そうだよね。トイレも共用になるし、団体行動も多くなる…お母さんには(まだ)酷なんじゃないかなと思ってるんだけど」
すると母は
「朝のあれはね、ちょっとお買い物に行こうとしただけなんよ!なのに、ここの人が大げさに騒ぐから参るわ」
話がすり替わりました(!?)
「夜が眠れないし、一人で部屋にいると色々考えてしまってよくない。外出すると気分が良くなるだけなんよ」
部屋はわりと整っていて洗濯もしている様子です。
バッグをのぞくと転出証明書が届いており、折り曲げられて奥底に突っ込まれていました。
「間違いだから返さなければならない」と言っていたようです。
これが引き金になったのかな。
いつか読んだ認知症のニュースで
「帰りたいのは以前住んでいて一番落ち着いていた過去」
だと書いてあったのを思い出します。
出来る限りがんばって、自宅のカーペットを敷き、家具を運び込んで似た感じに仕上げたつもりですが…。
精神科を再度受診です。
母は先生の質問に対して
「地元に帰りたい気持ちはないんですわ。この地域もホームも快適ですわ」
と言います。
相談の結果、リスペリドンを夜に定期的に処方することとなりました。
しかしこれも、一筋縄ではいきませんでした。
①夜に投薬した一晩目
朝の七時半頃、母から電話があります。
「帰るからダンボールを今すぐ準備して」
「は?」
「どうしても帰る、あそこが自分のうちやけえ」
「そうなっちゃうんだ。やっぱり」
昨夜はお薬を飲んで寝たのでは?と聞くと、
「帰るのはゆうべからずっとよ。眠れてない」
「昨日、先生に地元に帰りたい気持ちはないって言ってたよ?」
「あれはね、嘘を言ったの!!」
頓服服用です。
②夜に投薬した二晩目
朝八時に電話があります
「今すぐ帰る!お寺さんに十四回忌の話をしなければならない」
ホームから電話があります。
「荷物を持って、すごい勢いで下に降りてきて走り出て行こうとしてました。外には出られない、娘さんを呼ぶと話して一旦部屋に戻ってもらいました。これから頓服薬をお持ちするが、娘さんも来て対応して欲しい。だが話してもおそらく納得はされないと思います。リスペリドンも半錠なので量も少ない。鍵付きのホームの方に至急変えたほうがよいです」
会社に遅刻の電話をし、薬がきいたかと思われる九時頃に電話すると、
「何の用?今日は来るの?しばらく会わなかったような気がする」
全て忘れている様子です。
→→ 馴染むために 2 に続く