閑話 たぬき
「大変!!」
「どうしたの?」
オムそばちゃんがお風呂場にかぎをかけて閉じこもってる!
「開けてー!!」
洗面台も洗濯機もあるので、そこに閉じこもられると本当に困ります。
お年頃なのでわかるのですが、おふろ自体にもかぎはあるのです!
そっちだけかけてくれればいい話なのです!
オムレットくんが出てきました。
「なんでだよ~りきちゃんたちだって部屋にかぎをかけたでしょ!」
「うう…」
今日はおばあちゃんが家に来ていたのですが、久しぶりで興奮したのか、テンションが物凄かったのです。
私がいると、かえって興奮してしまうようでした。
帰る帰る病(うちでは帰宅願望のことをこう呼んでいます)の延長だと思うのですが、所かまわず私についてまわり、腕をや肩をつかんで激しく揺すっては
「ねえ、どうしたらいい?わたし、どうしたらいいん!?わからんのよ、どうすれば!?」
と繰り返していました。
私の姿が見えるのがいけないのかな?
あんまりうるさいので、とじこもって部屋に鍵をかけてしまいました。
オムレットくんはその時、かぎをかけたのとはとなりの部屋で昼寝をしていました。
昼寝でこの騒ぎには気付かなかったのかと思ったら、全部聞いていたようです。
「相手してやってよ~!二人きりにするなんてひどい」
「ごめんごめん」
「なんでぼくが相手しなきゃなんないの」
「あれからずっと相手してたの?」
「しない」
付け加えました。
「たぬき」
たぬき寝入りをしてたってことだな…。
たぬき。
笑ってしまいました。
「興奮している時にはくるみくんを呼ばないと」
「くるみにばかり頼るのもなあ」
くるみくんがいるとおばあちゃんも落ち着きます。
「あの子の声を聞いたらイライラがすうっと抜けて行った」
などと言います。
「一緒に暮らすのは厳しいねえ」
「住んでしまえば、もう気にしなきゃいいんだよ」
「くるみくんは、おばあちゃんがうるさくなくても、いるというだけですごく気にするよ。そういう子だから」
「そうだね、そういう子だねえ」
二人で黙り込んでしまいました。
事態は少しずつ変わっていきます。
悪化という言い方はしたくないけど、もう戻らないと思うのはとてもさびしいことだなあ…。
→→ 家を処分する日 1 に続く
純国産線香花火セット / 西の線香花火と東の線香花火(30本入り)