行くか、行かないか
三番目の妹のおばちゃんが言います。
「いま、この時期は関東地方から九州へはやめた方がいいから。こちらも年寄りばかりなのでね。一応、葬儀の日程だけは伝えるけど、あとは判断してくださいね」
「いとこたちは?」
「みんな、見合わせです。だから気にしなくていいのよ」
私のいとこたちは、ほとんどが関東地方に住んでいます。
九州なのに、郷里に残っているのはごくわずかです。
地方から出て行って就職してしまい、戻ってこないの典型です。
周辺に住んでいるいとこたちも、来ないかもしれないとのことでした。
おばちゃんはそんな風に言って電話を切り、お通夜とお葬式の細かい日時と場所を送ってきてくれました。
とても詳細な内容です。
なので、また迷います。
これは来るなということではなく、行ってもいいってことなのかな…?
お通夜が翌日。
お葬式はその翌々日です。
どうしよう。
あんなに可愛がってもらったおばなのに。
最期に顔も見られず、お葬式にも行けないなんて…。
行きたいかと言われたら、行きたいです。
けいちゃんおじちゃんの様子も気になります。
* * *
7月中旬のことでした。
有給をはさんでいるとはいえ、ゴリラさんや白くまさんが滅茶苦茶に荒ぶっている最中です。
少しまとまった有給に入って、ほっとした所でした。
もうグッタリでしたが、辞めると決めたことで、気持ちは楽になっていました。
まだオリンピックもはじまっていません。
こんなに感染爆発もしていませんでした。
行けなくはないです。
というか、今しかないような気がします。
おじちゃんに電話をしてみました。
ガランとしたホールのような所にいるようで、声が反響しています。
お通夜に使うホールの場所なのでしょうか。
父が亡くなったときも、お通夜の前日に設営をしてくれて、そこに母と二人で座っていました。
「おお、おまえか」
というその声が、ボワーンと響きます。
正直、恐ろしいような孤独を感じました。
そして、おじちゃんの様子は何となく…。
とてもとても、精神的に参っているように思えました。
来なくていい、と言いませんでした。
理解はしているから、という言い方です。
これは、来れたらその方がうれしいのだが、という風に聞こえます。
周囲に誰もいなさそうなホールみたいな所に響く、涙まじりの声に、心が揺れました。
ど、どうしよう…。
オムレットくんにメールしてみましたが、仕事中で繋がりません。
これはやっぱり無理ってことなのかな。
何となく喪服を出して、着てみようとするのですが、これがまた、ぎっちぎちです!
ふとった…。
オムそばちゃんに背中のチャックをあげてもらって、やっと入りました。
うーん。
ピッチピチですが、まあ、いけるといえばいけます。
しかし、あまりにもピッチピチだったので、現金な話なのですが、それだけでまたテンションが下がりました。
とても、新しいのを買っている暇はなさそうです。
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