思ったより大歓迎
余裕がなくて疲れもあり、気分が悪くて酔いそうです。
名古屋で停車したあたりで、お香典の名前を書こうとしてみましたが、字が揺れるのであきらめました。
しかし、一文字は書いてしまったので、そこだけまるでアル中の字のようです。
母の分も用意しました。
うーん。母におばのことをどう伝えればいいのだろう。
亡くなったおばは、わたしにとっては、ドラマ「逃げ恥」のゆりちゃんです。
働いてもいないですし、結婚していましたし、でも子供がいませんでした。
ふらっと遊びに行っては、犬と遊んで、さんざん甘やかしてもらって帰っていたなあ。
郷里の駅に着いたとき、母を電車に乗せるのが大変だった時のことを突然、思い出しました。
これがフラッシュバックというものなのでしょうか。
そんなご大層な感じではなかったですが、一瞬、吐き気がして気分が悪くなりました。
母の鬼のような形相と、落としたねこのぬいぐるみのことなど、一気に走馬灯のようにシーンが流れました。
* * *
母の末の妹であるおばは、既についているはずなので、到着の連絡をします。
「二枚マスクを重ねて来てね!!」
「は、はいっ」
正直、不安です。
あんな「まん防」になっちゃってる関東地方から来ちゃって…。
どんな風に迎えられるだろうか。
小さくなっていなければ。
直接、通夜会場へ向かいます。
みな、私を見るなり立ち上がって、大歓迎してくれました…。
少し涙が出る思いです。
みなさん、それなりに年は重ねていますが、割としっかりしています。
どちらかというと、母の兄弟姉妹の連れ合いの人たちの方が、ずっとしっかりしていました。
肉親の血がつながっている人たちを、連れ合いの人たちがみな、介護している様子なのが複雑です。
オムレットくん、ごめん。
私も先にボケるかもしれないよ。
けいちゃんおじちゃんに会うのも久しぶりです。
「よう来てくれた、来てくれた」
と何度も言っていて、やっぱり来て良かったんだと思いました。
おばの顔のきれいなこと!
またどうして、母にしばらくぶりに会った時も、シワがないなと思いましたが、おばちゃんの顔も、すっかりなめらかです。
ああ、最期に会えて本当に良かった。
私は、オムレットくんが気持ちをくんでゴリ押ししてくれたのもあって、(その言い方はどうなのか)、こうして無理に来てしまいましたけど、たくさんの人が、死に目に会えなかったり、お葬式にも出られなかったりしているんだろうな…。
コロナ憎しです。
と同時に、母が亡くなったら私はいったいどうしたらいいんだろう、という、すうっと背中が冷えるような不安にも襲われました。
何だか、全然頭が働かなくてどうしたらいいかわかりません。
仕事の大騒ぎも、辞めることも、おばの訃報も、コロナなのにこんな遠くに来てしまったことも、何だかめちゃくちゃにからみあっていて、これ以上何を考えても無理な気がしました。
おじちゃんのお通夜の挨拶がまた、つらいものでした。
泣いているおじの向こう、背中の影に、また言葉の端々に、もうオムツ生活だったという、おばの介護に疲れ切ってしまった姿がにじんでいました。
おじもまた、施設に入れたこと、コロナで面会もままならなかったことに対して、ひどく罪悪感に苛まれている様子でした。
おじは、おばよりも年上だというのに…。
ちらほら聞いていた、全部はとても言えない闇な部分もありそうでした。
記憶をやっと呼び起こして、苦しみのはじまりがそこだった、という所から語って、途中からは言葉が詰まってしまっていました。
そこからは悪夢で思い出したくない記憶だという所が、尻すぼみに終わりつつも
「わしはひとり、ひとり、残されて…」
という、涙を抑えるために力のこもった台詞が涙を誘っていました。
これを聞くために帰って来たんだなと思いました。
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