玄関からすごいスピードで歩いていく母の姿が確かに見えました。 「お母さん！！！」 人通りがありましたが、かなりの大声でベランダから叫びました。

おばあちゃん、うちに帰る気満々です。 本当に大丈夫かな！？もう二度と連れて来れなくなるのでは？

今日はおばあちゃんを久しぶりに外に食べに連れて行ってあげようと思って張り切って出かけるつもりでした。 すると出る寸前に二人の子供が喧嘩を始めました！

えっ！？ びっくりしましたが遅すぎました。 「私の部屋、いっぱいになっちゃってるんだけど！おばあちゃんいつまでうちにいるの？」

実家からこちらに連れ帰る時に、ものすごく大変だったことが忘れられません。 母は置いていって、連れて行かない方がいのではないだろうか？

引越し業者さんはやはり、大手さんはどこも予約がいっぱいでした。 感じの悪い所もあって、がちゃんと電話を切られたりします。

リビングの机の位置を変え、キズ防止のビニールまで敷きましたが、このために、カーペットをどけてワックスまでかけなおしたので、大変な作業でした！！！ オムレットくん奮闘です。 もちろんくるみくんにも手伝ってもらいました。 （こんな時に都合よくお友…

家に帰ると母はまたちょっと通帳を探し始めましたが、比較的早く落ち着きました。明るい声とさばさばした調子で言いました。 「あそこが良かったね！もう決めてね？」

「先ほど、お待ちの間にごらんになったかとは思いますが、この施設は介護度がもっとも重くて医療措置が必須である、いわゆる『重度』の方向けの施設なんです」

見学しようとしていた施設は、歩いて行ける場所でした。小ぢんまりした玄関で、細長い廊下で中に通じています。

いくつか電話をして予約をしたあと、オムそばちゃんと散歩をしていた時に見つけたホームを思い出しました。

私は東日本には土地勘がありません。 「福井は新潟のした？」

「時間を見たら深夜の三時で。テレビを見ていたんだ」 「まじで」 「普通に見てるのとは違うんだ。すごい大音量なの」

帰ってきた！！ 「まあー〇〇さん！」 義母は母の手を取りました。 「お元気そうね、まあ～！相変わらずお美しくて…」 母は突然、ものすごく機嫌がよくなりました。

どうしてぬいぐるみ一つにこれほど大騒ぎをしたのか…。 確かに、とても大事にしているものではありました。

先週土日でしたが日曜日にオムそばちゃんと一緒にお出かけをしました。 「今日のご飯て決まってる？」

「みんなに挨拶できて本当によかったね、お母さん」 返事がありません。母の横顔を見ると、また暗く険しい表情になっているのに気付きました。 怖い…。

墓参りに行きました。 タクシーには待っていてもらいました。

「お母さん、お墓参りに行くよ」 そううながすと、オムそばちゃんが聞いてきました。「もう行くの？今日帰れる？これでもうこのまま帰ってこないよね？」

「近くにむさしの森コーヒーが出来たんだよ！行ってみよう！！」 「承知」

「お母さん！さっき大変だったの、何も覚えてないの？」 「大変だった？あたしが？」 「そうだよ！すごい騒ぎだったじゃないの。何も覚えてないの？」

オムそばちゃんが「どうするの？」と、後ろからたずねました。 それにしても暑い。その日はかんかん照りでした。

担当者の方、なかなか手続きに入ろうとしてくれません。定期の通帳を開けたりしめたりひねったりしています。

以前に、こんな事がありました。 煮物がどうしてもうまくいきません！そこにオムレットくんが帰ってきました。

「あの私、娘なんですが、おばあちゃんを遠方に引き取りたいので定期の解約をお願いしたいんです」 限りなくあやしいです。 しかも、母の片目は殴られたようにまっくろです。

「うわぁ～ひどい！ひどい！何これ！？なんで？どうして！？」 母が目を押さえてトイレからよろよろと走り出て来ました。

まずは切符！ 駅にしぶる母を連れていきました。「あんたたちの切符やろ？え？私？なんで私？」

意識もしっかりある。まずは病院です。 こんなこと言っては何だけどすごいタイミングです。