寝耳に水(オムレットくんの話)
毎月毎日、何か新しいことが起きていて、なかなか平穏な日々は送らせてはもらえません。
早く縁を切りたいのに、私はいまだに元職場を引きずっています。
そもそも人事の書類が届くのが異常に遅く、でも電話を掛けるのも嫌という状態が続いていました。
そしてそれは未だに続いているのですが、ちょっとだけでもゆっくりしたいという気持ちでした。
そんなとき、オムレットくん、恐ろしく深刻な顔して戻ってきました。
「もう本当にやばいかもしれない」
ええっ。
「ちょっと冗談ごとじゃない。洒落にならないぐらいやばいと思う。家のローン、どうなってる。見たいからそろえといて」
私もちょっと、気が冷えるような思いです。
サーッと背筋が寒くなりました。
まさか。
まさかの、このタイミングで!
二人とも無職という状態!?食べ盛りの子どもふたり…。教育費…家のローン…。
まさか!
何しろわたしは仕事を辞めたことをまだオムレット君に言っていないのです。
タイミングを見計らっていたところでした。
これはいよいよ言えない雰囲気だ。
ローン通帳、私もしばらく見ていません。
不安でいっぱいのなか、つくづくと通帳を見てみました。
あれ。これは結構残高がないぞ?
そうだ、繰り上げ返済をちまちまと頑張っていたんだった。
辞める辞める騒ぎの中で、すっかり忘れていました。
「オムレットくん、まあこれを見て」
二人でたくさんの通帳を持ち出してその前で腕組みです。
「今家にあるお金をかき集めれば、返済は終わるよ。そして少しあまりも出る。返済が終わったら管理費だけ毎月払えばいいということになるから、これまでのローン返済の負担がなくなってそれを全部貯金に回すことができる」
オムレットくん、相当不安で真っ青な顔をしていたのですが、これを聞いて少しだけ希望が出てきたような顔をしました。
「今すぐ路頭に迷うということはないか」
「そうだよ。そしてこっちは子供たちの学費積立の方。くるみ君の大学費用まではとりあえず心配ない」
しかし、オムそばちゃんの方はどうでしょう。
ここでローン返済が終わったとすればまだ希望はあります。
私、ここでまさかのフルタイム復帰の路線が出てきました。
ちょうど子供達も大きくなったところで、タイミングといえばそうです。
あああ、でも5時起きの四つ弁当が~。
フラフラになりながら辛くて仕事を辞めたというのに。
もちろんそれだけではありません。
今は、問題なく朝も5時に起きることができているし、洗濯まで全部終えても、まだもと職場に通っていた時間より早いのです。
精神的な問題がこれほど関係あるとは思いませんでした。
あれほど朝に起きられなかったのはいったい何だったんだろう。
憑き物が落ちたようです。
確かに今のテンションなら全然いける気がする。
でももうちょっと!
ずっと働きづめだったんだから、せめてもうちょっと休みたかったのに。
家計が重くのしかかってきます。
もうコロナ!!
全部コロナが悪いです。
おばあちゃんにも会えないし!
(会えなくなって少しは休めたけど…)
* * *
オムレット君の説明とはこうです。
会社が休業助成金を申請することになったというのです。
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