真綿で首 4
お昼を食べていたら
おとなりのテーブルのおくさま方が、お話をしていました。
「娘が孫連れてやってくるの。恐怖なのよ~💦💦」
「手が離れたと思ったらまた子育て…」
「わかるぅ~こっちは腰は痛いし体は弱ってるし」
「何でもできると思わないでほしいのよ~💦」
悲痛な叫びでした💨
訳ありデコみかん / うちも訳ありおばあちゃん!他人事とは思えない 価格:1,111円 |
~~ 真綿で首 4 ~~
仕方がありません。
ヘルパーさんに今年の夏に引越しを考えていることを伝え、
「母の様子がこのところおかしいので、夏に引き取りに行くまで、一時的にでも、訪問を増やしてもらえないでしょうか?」
と聞いてみました。
(この頃のわたしは、そういったヘルパーさんの支援も含めた全体的な計画は、ケアマネさんを通すことも知りませんでした。)
ヘルパーさんは、訪問を増やすことについては何も答えずに
「確かに、最近ちょっと記憶はあやしいんですよ」
と言いました。
それ、母はそばで聞いているのではないのかな?と、これは少しだけ気になりました。
「今日は暑いのに、クーラーもつけずにしょんぼりして座ってらしてね。カーテンも締め切って電気もつけてないんです」
「!?」
「ちょっと朦朧としてて熱中症気味だったので、どうしたの?クーラーはちゃんと付けないとだめよって言って、クーラー付けて、水を飲ませたら、今は少し意識もはっきりした所なんです」
6月なのに殺人的暑さが続く年でした。
危ない。危なすぎる。
実家の景色が思い出されました。ピアノの部屋とリビング、キッチンは、敷居をはずせばほぼつながります。
窓は広く取っているのに、重たい遮光カーテンをぴったり閉めて、昼なのに薄暗くなった部屋・・・年季の入った壁・・・。
陽に焼けきった古い写真みたいに、茶色くくすんだ部屋の中に、ぽつんとひとりで座っている母の姿が思い浮かびました。
「訪問の頻度も、引越しのこともあわせて、その相談はケアマネさんですね。そちらが全部やってますので、連絡していただかないといけないですね」
「で、その方が今回、変わったということなんですね・・・」
わたしの電話番号を伝えてもらうことにしました。
いま、わたしは反抗期の子供たちに大慌てで、てんてこまいの生活がずっと続いていました。
ひとりの時間がこの上なく貴重だと思っていたので、母の一人暮らしは時にうらやましいと思うことさえありました。
うちはマンション暮らしで、部屋数の方が人数より少ないぐらいです。
その上、散らかし放題、片付け知らず、足の踏み場もないです。
母は、二階もある一軒家にたった一人でいるんだと、改めて実感しました。
父と私がいた時は広々と感じていましたが、今こうしてみると、ただただ荒涼としていました。
暑さはたしかに暑いはずなのに、ひどくうそ寒くて、暗くて、恐ろしく感じました。
→→ 真綿で首 5 に続く