昔話 大恋愛 1
この前まだまだ元気な一番年下のおばにあった時に
「りきちゃん、お母さんの恋愛を書いてあげたら!」
と言われました。
けっこうたくさんの人に言われました。
でも、そんなにうまく書けないだろうな。
「だそうです」「みたいです」と書くしかないですし、話としてイマイチです。
まるで見てきたかのように書くのもなかなか難しいです。
しかし私はこの話、小さい頃から今に到るまで、難十回、下手すると百回を超えるぐらい聞かされました!!
おじおばの親戚からも、母のお友達からも…。
なので、母が頭で作り上げただけの話ということでないのは確かです。
昔のことなので、びっくりするようなことがいっぱいあります。
母が終戦後に日本に引き揚げてきたのは小学生のときです。
S先生という先生がいて、優しくてイケメンで女生徒の憧れの的だったそうです。
まだ若い、卒業したばかりの先生です。
その頃は戦争で若い男性は皆、いなくなっていました。
たくさんの優秀な方が亡くなりました。
しかし、わずかですが生き残って帰ってきた方たちがいました。
S先生はそんな中の一人でした。
先生になったばかり、23、4です。
S先生は細身で、少し病弱だったようでした。
六年生の時に、「野口英世の母」と言う劇をすることになりました。
母は、野口英世の母の役をしたのです。
これは母のお友達から聞いたのですが、その劇の間じゅう、S先生は身を乗り出して、劇のはじまりから終わりまで、母一人に目が釘付けになっていたそうです。
母が中学を卒業するときのことです。
先生は、弁護士試験を受けるために、上京することになりました。
そのとき先生は、母の父、つまりおじいちゃんの所に挨拶に来ました。
母が大きくなったら結婚させて欲しいと頼みに来たのです。
その頃は(本気であれば)、本人に交際を申し込むより先に、親に話をしに行くようです。
「きちんとしたおうちのおじょうさん」であるほど、恋愛=結婚なのです。
先生が母のことを好きなのはほぼ公然でしたが、付き合ったとかそういうことはないです。
なので、母の父、私のおじいちゃんに結婚を許してもらいに来たのです。
→→ 昔話 大恋愛 2 に続く