おばあちゃんの足 2
おばあちゃんの足を洗いながら、色々とおしゃべりをします。
こちらも手を動かしているので負担になりません。
「妹が来たような気がする」
「そうだったんだ」
前に来てくれた時のことを思い出したのかな…
「あなたは男の子が何人いたかな。何人子供産んだかな?」
「男の子はひとり、くるみくん。もうひとり。オムそばちゃんだよ」
「だんなはだれかね」
「オムレットくんです」
「はあ、あなたのだんなは神経質な人だから大変よね」
これはいかにも母らしい答えです!
多分、別の人と間違えています。
母が誰かのだんなさんのことを「神経質な人」という時は、いつも決まっていて、だいたい誰のことかはわかります。
そのかたはしっかりしててお元気のはずですが、もう随分会っていません。
おぼろげなイメージは残っているようです。
母はこうして足を洗ってもらうことをとっても喜んでいるようでしたが、裏腹な気持ちがあるみたいです。
「ああ嬉しい。でもあんた!そんなことせんでいい!することないで?そんなのより来てくれたことが嬉しいんやからね!せんでいいよ!もういい!」
これは母特有の言い方で、お世話になるのがいやなのです。
自分でしたいし、人に負担と思われるのがいやで、迷惑かけたくないのです。
かといって、依存的なところも多分にあるので、こんな感じになってしまいます。
足の指の間までしっかり洗いました。
足を洗うのがこんなに大変だと思いませんでした。
足の甲の部分がすこしうっ血しています。
何といっても、転んで入院までしたのですし、腰の骨はやっとつながったかつながらないかぐらいのはず。
こんな風にまるで何もなかったように歩けているのは、ひとえに母の生命力、パワーだと思います。
洗い終わると、やはり、かすかに感じていた違和感のある匂いがなくなりました。やっぱり。
あの異臭は足が原因だったんだ。
これは、定期的に来て洗ってあげることにしよう。
お別れを言って外に出るとき
「あら、じゃあ私の財布。財布を持って行きましょう」
と言って部屋の中に探しに戻りました。
靴下を洗うのお願いできますかと頼んで、洗濯機に入れます。
扉を開けてもらうのに少し手間取っていると、母が向こう側から凄い勢いで走ってきました!
とても骨折をした老人の走り方とは思えません!
入り口で対応してくれたのは、まだ若いかたで…真面目で誠実で、うそが苦手なようでした。
母の
「出られん?なんで出られんの?」
「ここで待て!?本当に戻ってくるんやろうね?嘘はいやよ」
という言葉に苦しそうな顔をされます。
わたしもくるしいです。
もう慣れなければならないと思いながらも慣れません。
しかし、外に出て喜色満面のオムレットくんと、その大量のお買い物を見て少し気持ちを切り替えました。
ただひとつ、失敗したなと思うのは…。
熱々のお湯と水と分けて水筒で持って行ったのですが、冷めると思ったのが案外冷めておらずものすごく熱々で、ちょうどいいお湯の量にするのに手こずったことでした。
今度から最初から丁度いいぐらいのお湯にして持って行こうと思いました。
コロナウイルスで大騒ぎの昨今ですが、もうちょっとで春がやってきます!