四角関係の九州ラブストーリー
おばから電話がありました。
母の妹、ちょっと自慢するクセはあるけれど、基本とても明るいおばからです。
まだとても元気です。
おばの四十九日が終わり、小さな可愛いお墓を作ってもらった、とのことでした。
早い、なんて早いんだろう…。
あんなにも大騒ぎをしている最中に訃報がとどき、おばちゃんの死に顔を見てなんて綺麗なんだろうと思ったのは、ほんの何日か前のことのようです。
とてもはっきりとした記憶として残っていました。
「正直、うらみもあったんだけどね」
おばちゃん、まだ言ってます。
姉妹の情としてはきっと、仕方のないことと思います。
こちらは介護する側の立場としてきいているのですが、今は仕方ないと思えるようになりました。
おばも、色々葛藤があっただろうなと思いました。
そこから、昔の思い出話になりました。
驚いたのは、おばの記憶がものすごくはっきりしていることです。
想像以上にはっきりしています。
若いころ、幼いころの記憶まですごいです。
昔はよく母から聞いていたのですが、母が認知症になってしまってから、あまりの大騒ぎに吹き飛ばされたような感じで、忘れてしまっているところも多かったです。
興味を持って聞いているとおばもうれしいようで、あれこれと話してくれました。
「聞いたことある?お母さんの恋愛」
「ええ、たくさん聞いてきたけど」
「そうよ~とにかくあの人はね!モテてモテてすごかったからね」
「でも、好きだった人はねえ……一緒にボートに乗ってて、その人のほうに、お母さんと恋愛する覚悟がなかったっていう話をされたって話はきいた?」
「ききました」
このあたりで、ちらっと書いた話です。
「もうひとり、作家さんになった人のほうは?」
えっ。
それは知りません。
初耳です。
よく話を聞いてみると、どの人かはわかります。
その、「ボートに一緒に乗った人の親友」で、「母の親友と結婚した」という人です。
す、す、すごい…。
よ、四角関係だ~~!!
昭和のラブロマンスだ!
九州ラブストーリーだ!
母は、その人の話をよくしていましたけど、まさかそっちも恋愛にかかわっているとは思わなかった!!
さすがに、娘のわたしに、「自分の親友と結婚した人とロマンスがあった」などという話をすることはできなかったのでしょう。
もしおばの話を母が聞いたら、すごい勢いで否定してくるかなあ。
それともやっぱり、
「知らん!わからん!」
と言ってしまうのだろうか。
「それにしても、おばちゃんすごいね」
本気でほめると、
「覚えているうちに話しておかないとね!こんな話ができるのも、もうおらんからねえ…」
と、しみじみとした声になりました。
おばちゃんのところは、男二人兄弟なのですけど、何となくいま自分が男の子と女の子を持っている身としてはわかります。
女の子はそういう話を興味をもって聞いてくれますけど、男子はわりとてんで興味がないところがあります。
人によるのかもしれませんけど、おばちゃんのところの二人兄弟は、こういう話はあまり興味がないだろうなー。
亡くなったおばがいたときは、話もできただろうし、でも今はこんな話ができることもなくて、さびしい思いをしているだろうな。
さらに突っ込んで、いろいろと聞いてみました。