今日もまた違う一日

今日もまた違う一日

おばあちゃんが認知症になった時のお話です。

通帳ふたたび 3

ニュースにこんなのがありました!

nakamaaru.asahi.com

うちのおばあちゃんもプライド高いです。

わたしも、わざと子供に戻ってみたりしています!!

 

まだ慣れないながらも、はてなブログ、いろいろためしてみていますが、ニュースなどを埋め込みできるのはとても良いですね!!

 

 

 

おばあちゃんが認知症になったお話 → 目次

 


~~ 通帳ふたたび 3 ~~

 

 


謝罪の電話をかけると、お隣さんは、
「久しぶりね~元気にしてるの?」
となごやかに話してくれました。

地域の中でも敬遠されがちな母とずっと仲良くしてくださった方です。
私も小さい頃からとてもかわいがってもらいました。

「通帳を探すのはちょっとなあ…だから、あたしも上がってみたんやけど、あまりまじめに探さんかったんよ」
「本当にご迷惑かけて申し訳ありません」
「いやいや、こういうのはお互い様やからな。それよりな、銀行に電話して止めたからな、心配せんでいいよ」

 

このかたは地域活動にも腰が軽いし、優しくて誰にでも好かれていて、とても人気者です。
こういう方が母をかばっていてくれるから、これまで母はここで暮らせていたのだ、と思いました。
(地域の実力者のような方が、母が嫌いだったら、母はもっといじめられていたと思います)

 

電話口で、(お相手には見えないですけど)何度も頭を下げました。
「いや、でも母もいいかげん年ですし、そろそろ、関東に引越しを考えてるんです」
「ええ、そうな?元気でやっとるけどね?お母さん嫌がりゃせんかね?」
(…?)

 

母は自分から、そっちに行きたいと言っていたので、あれ?と思いながらも説明しました。
「早いうちがいいと思って…慣れないといけませんし。今度の夏休みにでも、引越し先を見に行こうと思ってるんです」
「そうね、そりゃあ、こっちはさびしゅうなるなあ」

 


この数日後、義理実家に遊びに行きました。
義理の両親は、都心をすこしはずれた自然豊かな場所に引越しています。
こどもを遊ばせるのに最適です。

義母にまだ、母をこちらに引き取ろうと思っていることを話せませんでした。
何をどうしていいか、自分の中でぜんぜん決められませんでした。

 

娘がいつまでも外で遊んでいるので、不安になって外に出ると、髪が真っ白のボブカットの奥さんがニコニコしながら、娘さんはあそこよ、と指さしてくれました。
じいっと私の顔を見ています。

「あなた、Oさんのお嫁さんでしょ?」
「はい、そうです」
「私ね、×××出身なの」
「ええー、近いですね!すごい、こんな所でお会いするなんて!」

 

同郷の気安さ、話は盛り上がりました。
でもお互いに郷里の言葉は出ません。
関東地方で過ごした日々が長すぎて、標準語にしかならないのです。
それは、その奥さんも同じでした。

 

「どうしてこんな所にいるんだろうって時々思う」
「わかります!」
「遠いし、親も死ぬと帰る気にもならなくてね。兄弟でもいれば別だが」
「本当に、想像も付かないぐらい遠いですからね。関東辺りの人にとっては、北海道に行く方が近いですもの。北海道って地の果てだと思ってたら、こっちが地の果て扱いですよ」

 

遠い。ほんとうに遠いのです。
母はほんとうに引越しできるんだろうか?
この先の見えない手さぐりの状態に、結末みたいなものがあるんだろうか?
なごやかにお話しながら、そんな風に思って気持ちがしずみました。

 

 

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