今日もまた違う一日

今日もまた違う一日

おばあちゃんが認知症になった時のお話です。

閑話休題 オムレットくんと私の気鬱の病

 


なんとなく春になって気鬱の病のようなものを覚え、朝起き上がれなかったり仕事が辛かったりしました。
帰ってきたらすぐに横になってしまいます。
おばあちゃんのお弁当も滞りがちで、買ってきたお弁当渡すようなことが続きました。
健康にも良くない…。

 

オムレットくんは冗談めかして、どれだけ眠いんだよ~と言ったりしますが、日々の夕食もままならないような日々が続きます。
(しかも休日はオムレットくんが食事を作ってるのです!)

いけないいけないと思いながらも、体がついていきません。

 

そして春分の日
お休みなのに朝に寝てしまいました。
オムレット君は午前中仕事だったので外に行きました。

 

途中から起きだして、くるみくんはお友達と約束があったので、オムそばちゃんを近所の水族館に連れて行きました。
帰ってくると、それはそれでまたぐったりです。
オムレットくんは早めに帰ってきて、寝ている私を見ました。

 

はっきり言って、朝行く時に寝ていたし帰って来れば寝ているのだから、オムレットくんは私の寝ている姿しか見ていないのです!

 

かっぱ寿司でも食べに行こうか…」
と私は言いました。

 

するとオムレット君は
「みんな着替えよう」
と言いました。

 

それから二人でちょっとお店の検索をしましたが、前よりもお店が見当たらない…!?
(ちょうどニュースで噂になっていた、Googleマップの劣化のせいのようでした)

 

「まあ、なんとなく歩いてぶらぶらしよう」
とオムレットくんは言いました。

 

こんなふうに家族四人連れ立って夜の道を歩くなんてすごく久しぶりのことでした。
あっちこっちの気になるお店を覗いて、ああでもないこうでもないとおしゃべりをしながら飲み屋さんに入りました。

 

半額サービスになっていた焼き鳥屋さんの中に入ると、タバコの匂いとお酒の匂いがむっと立ち込めます。
ざわざわとした店内と人々の姿、ものすごく久しぶりに、外の世界のにおいを嗅いだ気がしました。
若い頃、売り込みであちこち飛び回って、専務や合コンや友達との飲み会や、オムレットくんともあちこち食べ歩き、飲み歩いた日々を思い出しました。
それは既に遠い世界になっていましたが、ふとその頃の気分がよみがえりました。

 

帰ってくると、体が少し動くようになっていました。
オムレットくんは私を一言も責めることなく外に連れ出して、ぶらぶら散歩をして何の変哲もない会話をしながら私を慰めてくれました。
本当の癒しがそこにはありました。

 

彼はそういうところがあるのです。
人の気持ちが分かるのか、天然でそのままやっているのか、熟慮のすえにやっているのかわかりません。
自分のことなのに自分ですらわからない私の望みや求めているものが彼はわかるのでした。

 

この一瞬があるから、日々をやっていけるのだと私は思いました。

 

おじいちゃん、おばあちゃんになってもこの気持ちを失わずにいられるのかわかりません。
先のことは誰にもわからない。

だけど今は、私は心から言えると思いました。
この人と結婚して良かった。

 

 

 

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