お別れ 2
「靴下ー僕の靴下!どこに行ったの靴下がない」
「うるさいな~いつまで探してるの?」
「片方だけ靴下屋で買って800円もしたのに絶対におかしい!」
オムレットくんが大騒ぎをしていました。
「普段は絶対に靴下屋でなんか買わないのに、5足セットの安物を買うのに!」
オムレットくんは服や靴下にはこだわりがあるらしいので(たぬきなのに)、自分で買いに行きます。
なので、私の管理のもとにないのです…。
「ちょっとたまにはと思って買ったのがもうない!!おかしい!」
「オムレットくん、靴下がないって怒ることが出来るのは、脱いだものをちゃんと洗濯機に入れてる人だけだよ」
「くつした!!!!!」
クルミくんはあっという間に姿を消していなくなっていました。
オムそばちゃんもこういう時は鳴りを潜めて静かにしています。
「このゴムの滑り止めがあるのは、前に私が誰のかわからなくて捨てたってやつじゃないの?この製品があるかどうかネットで調べてみよう」
靴下屋のホームページを確認したところ、靴下屋に商品があることが判明、買ってあげると約束してオムレットくんはおとなしくなりました。
そして子供たちには
「喧嘩してない。話してただけ!!」
と主張していました。
~~ お別れ 2 ~~
お墓参りに行きました。
タクシーには待っていてもらいました。
割と人里離れた閑静な場所なのですが、花が絶えません。
父は高校の教師をしていたので、部活がらみもあって何かと教え子の方が詣でてくれているようでした。
しかし、あまりにも耐えないので母が一度やきもちを焼いたことがあります。
お盆にも、何回忌かでお墓参りに行っても、必ず母より先に花が置いてあるそうなのです。
真偽はわかりませんが、私は母の考えすぎだと思いました。
父は母に完全に尻に敷かれていましたし、行動も完全に掌握されていました。
今日も生花がありました。
この日の今日もあるとなると、ちょっとびっくりです。
「お母さんの気持ちが少しわかった気がするわ」
と言うと、
「そうやろ!?気味が悪いし気分が悪いわ!」
と顔をしかめているので笑ってしまいました。
またちょっとだけ「男の子」のことが頭をよぎりました。
お父さん!お母さん連れて行きますからよろしくね。
またお父さんも、おばあちゃん(父の母)も迎えに来ますから。
ご先祖様、どうぞお守り下さい。
とお祈りしました。
お墓参りをすませると、
「家に帰るよね?帰るやろ?」
と母が何度も聞きます。
「いいや。このまま駅に行く。切符は買っているし荷物もある。電車に間に合わなく鳴っちゃうから」
説得するというより、断定しました。
駅に着きましたが、まだ時間が早いです。
「そうだ、お母さん。この近くに運動クラブがあるよね?最近やめたって言ってたけど寄ってみる?」
「そうやわ。この曜日のこの時間なら皆いると思うよ」
長年母が通っていた運動クラブへ寄りました。
そううまくいくかな~?と疑念を持っていたのですが、クラブに行くと先生から通っている方々がどっと寄ってきて口々に声をかけてくれました。
この時もすごいタイミングだなと思いました。
このクラブは母が長年通っていた所でよく話も聞いていました。
狙ったわけではないのですが、結果的に顔を見せることができ、ご挨拶できて本当に良かったです。
皆さん、かなり心配していた様子が伺えます。
「やっと行くんやね」「よかったね」「さびしゅうなるけど、安心したわ」などなど、前々から私の所に引越す話はしていたようです。
ここでも皆さんに会う前、母は私に
「私はどこにも行かん。ここにいるからと皆に言ってね!」
と言っていました。
が、会った途端に皆さんがそういう空気なので、母も何も言えなくなりました。
勢いに押されています。
「むにゃむにゃ…う~ん。そういう事になってしもうて…一人でまたやれるんやけど…」
「何言ってるの!」
先生は、どっしりとして体格のよい、風格のある方でした。
「娘さんの所に行くって、ちゃんと私と約束したやろ!」
と太い大きな声できっぱりと言います。
「約束したよ!もう行くって。私は聞いたからね。しっかりやるんよ!」
母は、この方が大好きでよく話も聴いていました。
なるほど頼りになるしっかりした方でした。
母は頭が上がらないようで、何度もうなずいていました。
その力強いきっぱりした言い方に、実家に後ろ髪を引かれて後ろめたかった私の気持ちも後押しされました。
相当に強引なやり方だったけど、やっぱり正しかったと思うことができました。
→→ お別れ 3 に続く
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