入居まで 3
もう消えてしまいましたが、少し前に認知症で免許を返納したかたが、返納したことを忘れて車を運転してしまったというニュースを見ました。
認知症あるあるです!
田舎は車がないと暮らしていけない事情は重々わかっているつもりでしたが、これは考えてなかったな~。
免許は返納しても車があれば乗ってしまうでしょうね。
やはり動向は常に注意していなければいけないのですね…。
~~ 入居まで 3 ~~
出来る限り、一番居心地の良い環境にしてあげたい、とは思ったのですが…。
すべてをかなえることは難しい。
ホームの部屋に入って、しばらく一緒にいました。
終始ぼーっとしていて、元気がない様子です。
ずっと財布と通帳の入った赤いカバンを肌身離さず、トイレに行く時も部屋の中でも斜め掛けをしています。
また、指輪の話ばかりを頻繁にします。
あぁ~置いてきた、しもうた~!!!と。
あるよ、と言うと抱えて中身を一つ一つ確認します。
それからしまいこみ、またない、ないと顔色が変わる…。
どこかで見た風景です。
これ、本当にここでやっていけるんだろうか??
果てしなく不安になりました。
ホームから出てしまった時に、電車に乗られてしまうと大変です。
財布の中のお金もぎりぎり地元には帰れない程度にしなければならないと思いました。
しかし、母は赤い斜めがけバッグを片時も手放しません。
すきを伺っていましたがダメです。
「ちょっと、お母さん!どうしてトイレまで持って入ってるの!部屋の中なんだから置いておいて!!」
はずしてもらって、わずかなトイレの間にいそいで中身をさぐりました。
めちゃくちゃ抵抗がありました。
恥ずかしくて、恐ろしくて、悪いことをしている気持ちになりました。
泥棒!とか
金にぴょんぴょん飛びつくカエル!
実の子も金を狙うからね!
なんて言われたな…。
通帳はあった方が安心すると思いそのままにしました。
ですがキャッシュカードと印鑑はこちらで保管します。
良心がずきずき痛みます。
本当に泥棒になった気分でした。
お父さんに言われて、くるみくんが新聞をおばあちゃんの所まで届けてくれました。
「じゃあおばあちゃん」
「はい」
「行くからね」
「えっ!?もう行くん?はぁ~」
母は肩を落とします。
「いやいや。今までよりもずっと近いから。すぐに来れるし、すぐに来るから」
扉を閉めて、帰りました。
開放感が襲いました。
本当に大変なのはここからだとも知らずに...。
→→ 入居まで 4 に続く