おばあちゃん訪問です
今日のおばあちゃんはあまり具合がよくなさそうでした。
(この場合の「具合」とは精神状態の方を意味します。でも普通の人だってあれこれ考えたり不調だったりするので仕方がありません)
興奮していて、ウロウロと歩き回り、私の顔を見て
「心臓が止まりそう!!ビックリした!」
と言いますが、あまりうれしそうでもありません。
歩きながら
「あんた結婚したかね?」
と聞きます。
少しずつ、少しずつ…記憶が後退しています。
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「うん」
と答えると、びっくりします。
「そうなん!?あんたあたしに何も言わんで!こっそり結婚したん!?」
「………」
「集金しよる人やろ?」
「いや、集金はしてないけど…」
集金してる人のイメージはいったい誰なんだろう。
遠い昔の母の記憶のかけらなのかもしれません。
「それで子供もおるん?」
「いるよ」
「まー!!びっくり!」
そう言ったかと思え、ふとこんなふうに言いました。
「二人よね?何人産んだ?」
オムレットくんより、まご二人の記憶の方が影響が強そうです。
嬉しくなって答えました。
「ふたりだよ。くるみくんとオムそばちゃんです」
グループホームのケアマネージャーさんがついてきてくれました。
「少しでも会話をと思って…お母さま、本がお好きみたいですがどんな本がお好きですか」
もう…母は読書どころか、字を追う力もない…。
「ミステリですかね…」
母が苛々しています。
「いいかげんにして!もうやめて。話が終わったらもういいでしょ!」
前からよくあったことでした。
誰かと私が話していると、やめろやめろとせっついてきます。
友達と電話していると、よく邪魔されたなあ。
気になって仕方ないみたいです。
「ほかに気になられることありませんか?」
足がまた洗われていないと思うこと、もう言いませんでした。
このまま帰っても良かったのですが、鞄にはせっけんが入っています!
洗って帰りたい…。
でもそのことをあまりさとられたくない…。
ケアマネさんにお礼を言ってお別れすると、部屋に入ってお湯のボトルとタオルを出します。
しまったーっ!!
せっけんを忘れてた!!
やはり、足はクサイです。洗っていない匂いがします。
足を洗う、毎日洗うというのは大事なことなんだなと再認識しました。
せっけん必須です。
用意していたのは(忘れてきましたが)、ポンプ式のボディシャンプーでした。
今度、持ってきてどこかすみっこにでも置いておこうかな…。
でも、食べ物もそうですが、認知症のかたって何をするかわかりません。
どうしてこんな所に!?というところにしまい込んだものが見つかります。
とりあえず今日は、お湯で洗うだけにしました。
それでも、かなり違います。
おばあちゃん、イライラしているので洗われながら強い口調で
「せんでいい!いい!やめて!」
と繰り返しています。
ですがだいぶ力が弱っているのと、洗っているのが足なのでウロウロできません。
私にはやりやすいです。
おばあちゃん、私の結婚のことばかり話していました。
繰り返し繰り返し
「そうあんた結婚したの!私に何も言わんで!誰と結婚したの?」
と言っていました。
くるみくんもオムそばちゃんも、なるべく会わせた方がいいんだろうな。
相変わらず、帰りは逃げるようにしてさよならします。
でもまた必ず来ます。おばあちゃん。
さすらい猫ノアの伝説 (講談社文庫) (日本語) 文庫 - 2019/8/9 重松 清 (著)