母の通院つきそい 2
吹き抜けになっている待合室では、日の光をいやがりました。
母はとにかく、美白が好きな人で、陽に焼けたくない気持ちがとても強いです。
夏なんて、サングラスに帽子に日焼け止めに、すごいことになってました。
あちこちに、いつもどおりの母の片鱗が見えます。
キョロキョロ、落ち着かないです。
眼鏡をなおし、胸をさすります。
ここはどこなのか、自分がどうしたのかわからなくて、パニックになりかけているのがわかりました。
でもお薬で抑えられてるのと、前よりパワーがなくなっています。
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何ヶ月もコロナで会わないでいる間に、またあんな風に骨折をして、母も気力、体力ともに衰えていました。
もともとがものすごい、エネルギッシュすぎるほどにものすごい人なので、「弱ったぐらいでまだ歩ける」という今が、こんなことを言うと何ですが、とても一緒にいていやすく、穏やかな時間です。
薬を使っていてすら、不安になるとパニックになってあちこちに行きたがり、(しかも力強いし)大変だったのが、今日はちょっとからだをゆするくらいでした。
トイレでは、母がおしりがふけないでいるのを、目の当たりに見ることになりました。
母はトイレができる状態で入所したので、下のお世話をほとんど見ることなく過ごしていました。
色々、気付くところがあります。
トイレットペーパーのことがわかりません。
備え付けのペーパーがわからなくて、補充用をしきりと手に取ろうとします。
でも、手に取ってもこれが何なのか、どうして手に取ろうとしたのかわからない。
こっちだよ、とペーパーを出して渡してみても、どうしたらいいかわからない様子です。
ああ、やはりコロナの6ヶ月は長かった。
それでも、服を着るのはちゃんと自分でしてました。
ちらっと、母がズボンの前側になにか白いハンカチのようなものをだいじにはさんでいるのが見えました。
出てきてから何気なく母を見ると、あれっ?
「お、お母さん、マスクは!?」
さっきまで付けてたのに、影も形もなくなっています。
母はカバンを持っていないし、ポケットにも入っていません。
トイレに落としているわけでもなかったです。
えっ?あれっ?どうして?
コロナですし、しかもよりによって病院です。
車の中なら換えがあるのですがどうしよう。
取りに行こうかと立ち上がりかけたとき、はっと思いつきました。
母がズボンの中にはさんだ白いハンカチのようなものがマスクでしたー!!
うーん何が起きるかわからないものだな。
あっ。
つけたはいいけど、マスク、はずしてたたみはじめた…(笑)
なかなかむずかしいな。
この病院は待つので有名なところです。
三時間ぐらい待って、やっと診察時間になりました。
「今度、骨密度を調べてみましょう」
しばらく通院です。
一ヶ月に一回会えるので、良かったかもしれない。
母にとっても、私にとっても。素直にそう思えます。
歩いていると、ちょっと違和感があります。
母は、なんとなく左へ左へと寄って行きます。
右と左に引っ張りあいっこですが、そこはやっぱり母で、力がすごく強かったので歩行を修正するのが大変でした。
手をそえて歩いているおばあちゃんに引っ張られるという、何というかやっぱりそこは母です。
骨折した人とは思えないような強さ…。
声をかけてもだめで、若干、引っ張り合いのようになり、眼鏡が落ちてしまいました。
眼鏡がだいぶ、広がってしまっていて顔に合いません。
本当に、色々あるなあ。
やっぱり小さな所は家族が気付くものです。
母も気付いたらしく、車の中でもめがねをはずして仔細に観察して
「眼鏡が曲がってる」
と言います。
「さっき落としたからね」
色々あってかなり前、30分ぐらいは間があるのに、覚えてるんだな!
むらはあるけど、こんなことにいちいち感動します。
病院の先生にも言われて、ごはんを食べるのはあきらめましたけど、まだまだ通院は続きます。
何か、どこかで一山超えたような気がしています。
その線引きみたいなものが、いつもはわからないものですが、今日はすっと見えました。
鬼押出し園から見えた空でした。