ちょっとのんびり
あれ?
仕事を辞めたのに、意外と、忙しいぞ?
片づけのひとつ、お掃除の一つもすればあっという間にお昼になって、残り物を食べ、買い物に行って夕食の準備をすればあっという間に夕方になっています。
今までどうやっていたのか、さっぱり見当もつきません。
とりあえず節約せねばならないので、極力、外食を減らしています。
カフェにもいかなくなり、お昼を外で食べるのもやめました。
今までは、かなりの頻度でお店に行ってしまっていました。
気晴らしにもなるし、お店でノートPC開いてブログ書いたりなどやっていました。
今はもう、「オムレットくん+わたし」の分の外食がいっさいありません。
お惣菜を買うこともなくなり、デリバリーよりも作り立てのほうがおいしいので、最近はおそろしいほどファーストフードを買うこともしなくなりました。
一応、一か月たってみなければ効果はわかりませんが、とにかく食費はいままでいったいいくら使っていたんだというほどの放漫会計でした。
疲れてしまって、そちらまで心が行く余裕がないのです。
* * *
5時起きでお弁当を作るのですが、前日に作っておくような余裕もできるようになったため、あまり負担ではなくなりました。
これではまったく、何のために働いているんだかさっぱりわからなくなっていた、というのも、やめたい理由の一つではありました。
それから洗濯をします。
二度寝していたのがウソのようです。
そして冷蔵庫を見ながら、中身をメモります。
これは、携帯のメモに音声入力で入力しています。
ビバ・音声入力!です。
上の段、チルド室、野菜室、冷凍庫と、ぶつぶつ呟きながら中身をメモっていきます。
午前中は、くるみくんがリモートで家にいるのでうるさいです。
リモート授業、家の中に学校が来てしまったかのような騒ぎです!
静かな環境にいたいし、ひとりにもなりたいので、午前中は図書館に行くことにしました。
メモを見ながら、なるべく無駄にならないよう、献立を立てていきます。
これだよ~!
この生活がしたかったんだよ~!
正直、学費が心配でならないので、早くハローワークにも行きたいし、失業手当の申請もしたいのに、1週間たってもまだ、会社から離職票が来ていません。
レシピサイト、わたしが最近一番気に入っているのはクラシルです。
昔、結婚するまえに、女性の上司がお料理は3分クッキングが一番よ!と教えてくれました。
手順が見られるからイメージしやすいと言ってましたけど、まさにクラシルはいつでもどこでも3分クッキングという感じです。
簡単な材料ばかりでしかも美味しいです。
COOKPADは、個人の好みがあるので、あまり活用していません。
もっと、アレンジなしの基本的なものしか作れない人なのです。
今は、奇跡のようにお弁当が作れていますが、モチベーションもだいぶ違います。
オムレットくんとオムそばちゃんは、何ひとつ残さずきれいに食べて帰ります。
昔は、くるみくん(と、ときどき自分)だけにお弁当を作る毎日でした。
くるみくんは男子高校生なのに、普通の人にしても少ないような一段弁当の半分ぐらい残してしまいます。
「じゃあ、量を減らそうか?」
というと、これ以上量が減るのもイヤだという、意味のわからない状態です。
体が小さいかというとそうでもありません。
もう本当にわけがわかりません。
食べないお弁当、捨てられるお弁当を作るというのが、私の中では本当にストレスで、正直、くるみくんにお弁当持たせるのは大嫌いです。
これも不思議なことですが、じゃあ買ったお弁当の方がいいのかというと、それもイヤなのだそうです!!!
こんなお弁当生活、わたしがイヤだ!!
しかし、オムそばちゃんとオムレットくんが、同時に急にお弁当が必要になったことで、かなり変わりました。
お昼に、自分の分のお弁当を食べて「おいしい…」と思えるのが、しあわせです。
くるみくんですが、リモートになったことで、あたたかいごはんを食べられるようになると、それなりに食べています。
こ、こいつ…。
ただのグルメだ…。
義母さんが説得してくれました。
「わたしとくるみくんは、行かない」
案の定、オムレットくん、機嫌が悪くなりました!
家族みんなで行く、四人そろって行動する、というのが大好きなオムレットくん。
基本、私がついていくのはデフォルトで、くるみくんはもう大きいし、好きにしていいのだけど、オムそばちゃんがついてくるとなると、くるみくんが疎外感を感じるのもよくないので、全員で行動する。
という、ものすごくめんどくさい思考回路です。
私が「こんな感染爆発のときにも行きたがる迷惑な嫁」と思われたら困るんだけど~~~!!
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すっかり腹を立てたオムレットくん。
「いいよっ!わかったよっ!」
いつものおとなしいたぬきはどこへやらというように、スネたように吐き捨てると、自分で義理実家に電話をかけていました。
どうしてそんなに腹を立てる必要があるというんだ~。
いついつ帰るから~、自分とオムそばちゃんだけで~。くるみは塾があるから~。という声が聞えます。
そしてオムレットくん、さっきまでの勢いはどこへやら、おとなしいたぬきになって戻ってきました。
あまりにもあからさまに肩を落として、しょんぼりしているので、おかしいやらびっくりするやらです。
「どうなった?」
「断られた…」
義母さん!!
「今回は来ないで、やめといて、って言われた……」
「そりゃそうだよ!!」
当たり前です!
感染が東京で4000人、5000人といっているところです!
ワクチン接種は終わっているとはいえ、この爆発はすごいです。
長年、義理実家に毎年行っていますが、来ない方がいいと言われたのははじめてです。
いつも快く受け入れてもらっていました。
良かった…。私は行かないと言っておいて…。
ギリギリセーフだった。
* * *
数日後、義母さんから遠慮がちに電話がかかってきました。
「どうやら釣りをしたいみたいなんですよ。止めてもきかなくて…」
と、こんな時にどうしても行きたがったのは私じゃないんです臭を精いっぱい出してみました。
「そうらしいわね。でも、さすがにね~」
温厚でめったに断らない義母さんたちが断っているので、かなりのものです。
そもそも、兄弟姉妹たちもやめておく、って言ってるのに、そこまでかたくなに帰りたいオムレットくん…。
そこまで義理実家が大好き!義理両親が大好き!
というのとは違っていて、とにかく旅行!釣り!がしたくてしたくてたまらないらしいです。
義母さん、ラインをついに導入したので、連絡も簡単になりました。
いちど、ハクビシンを捕まえた動画が送られてきました。
そして、たくさんの野菜を送ってきてくれました。
にんじん、じゃがいも、玉ねぎの三点セットに加えて、とれたてのプチトマトがたくさんで、保存を間違えなければもつし、本当にありがたいです。
プチトマトはアイコという種類なのですが、市販のアイコよりも3倍ぐらいも大きく、まるでフルーツを食べているような味です。
これ、売れないのかなあなんて考えたことがあるぐらい美味しいです。
とりあえず、すっかりおとなしくなったオムレットくんに、胸をなでおろしました。
しかし、釣りにはど~~うしても行きたかったらしく、近所の川に釣り竿を抱えて出かけていきました。
どこかのお店で撮ったのですが、面白かったです。
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荒ぶるオムレットくん
ちょっと元気になってきたオムレットくん、暴挙に出ました。
ちょうどお盆の時期でした。
オリンピックが終了し、そのころいちばん感染が爆発している中です。
緊急事態宣言が出ているのに、どうしても、義理実家に行くといってきかないのです!!
おばのお通夜に、無理やり九州まで行ってしまたわたしですが、そのときに宿を取る手配をしてくれたのはオムレットくんでした。
わたしも、帰省したとき、電車の時間をぎりぎりまで遅らせて、あちこち回ってみていました。
今までなら行かなかったような観光地の場所や、史跡などです。
もうこれを逃したら、次はいつ来られるかわからないと思いました。
その話をしたり、おみやげを持ち帰ったりしたのですが、これがまずかったです。
オムレットくん、わたしの話を聞いているうちに、だんだん機嫌がわるくなってきました。
おばちゃんが自慢話をするということを話したあとで、史跡に行った話をすると(雨もふっており、閑散としていました)、写真を見せたとき
「ぜんぜん面白くないー!!」
と騒ぎ始めました。
本来なら、オムレットくんが一番興味があるような、戦国武将系の史跡です。
「え、ええ…?興味あるって言ってなかったっけ?」
「自分が行ったんじゃないから面白くない!ぼくも行きたかった!それ自慢!自慢話!おばちゃんと同じだね!」
つまり、オムレットくんは、すごくうらやましくなってしまったらしいのです。
ずっと、旅行がしたいしたいと言っていました。
一時期は少し感染も落ち着いて、これなら…と思ったところで、この感染爆発です。
ストレスがたまっていたようで、しかも義理実家は、オムレットくんの大好きな釣りスポットがたくさんある場所です。
やはり、釣り師というものは、もともとだまりこくって竿をもってウロウロして誰と話すわけでもないし、迷惑はかけてない、という意識が強いみたいです。
しかし、さすがにこの時期に、義理実家は…!
オムレットくんの兄弟姉妹も、みんな行かないと言っています。
う~~~~ん。
しかし、自分が背中を押して行かせてもらっていて、ここで行かないというのは言いにくい。
というか、行かないほうがいいんじゃないの、と遠慮がちには言ってみましたが、まるで聞く耳をもたない状態です。
これは、肩の痛みが和らいで、家の中をどうにかしなければならない負担もなくなって、元気になったのがまずいかったのです。
オムレットくん、急激にもとの日常に戻そうとしている感じがあります。
これ以上、行かない、っていうと怒り出しそうだなあ…。
でも、くるみくんの塾もあるんだけどなあ…。
なぜかわからないですが、普段はこんなに物分かりのよい、多少のわがままはあるけれど、食事もつくれる、あちこちに連れていってくれる、地元に帰るときには、ホテルまでとってくれるというオムレットくん。
そんなところもあるのに、義理実家がからむとど~~~してもダメなのです。
耳が聞こえなくなる感じがあります。
それは、オムレットくんだけではなくて、子どもたちもそうです。
義理実家のおじいちゃん、おばあちゃんもかなり年をとってきてるし、お手伝いしないとダメなんだよ!!といくら言い聞かせても、全員が赤ちゃん返りしてしまいます。
いや、それでもやっぱりまずい。
行かない、行けないぞっ…!!
あの時とこの時では、事情が違いすぎる!
まだ、オリンピックがはじまったばかりの時はここまでなっていませんでした。
くるみくんに頼み込んで、口裏を合わせてもらいました。
今、くるみくんが通っている塾は、自分で行く日にちを調整するので、お盆の時期だけ外すということは可能です。
でも、前の塾はそうではなかったので、塾があるんだ!と言ってほしいと言いました。
(一応、嘘ではないです)
「夏休み期間中は、くるみくんの塾がある。とりあえず、わたしとくるみくんは行かない」
と言ってもらいました。
「どうしてもというなら、オムそばちゃんと二人で行ってきたら?」
最低限の譲歩です。
わがままになったオムレットくん
しかし、叔母のお通夜から帰ってからすぐに、オムレットくんの言ったとおり、あっという間にものすごい感染爆発が起きてしまいました。
ちょうどオリンピック最中で、毎日、4000人越えという陽性が出ていたときのことです。
今、少しだけ落ち着いてきていますが、もうとても施設に
「会わせてください」
なんて言える雰囲気ではありません。
考えても考えても、何の答えも出ない問題です。
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わたしも、もっと早くに知らせればよかったのですが、何しろ本当に覚えているのかいないのかはともかく、母にとっては実の妹であるおばちゃんの名前も
「知らん!わからん!」
とはっきり言われたので、気が重くて知らせていませんでした。
でも、話してみるとおじちゃんも同じ意見でした。
「そりゃあ、ねえちゃんはわかっとるわ。言葉には出んしわからんと言うかもしれんけど、それはな、りきちゃん、すねとるんじゃ!ねえちゃんのことじゃけえ」
わたしもそう思います。
あの怒ったような顔が、何も覚えていないというとはとても思えないのです。
「何しろ、会えないというのがね…。さすがにここまで蔓延しちゃうと、どうしてもお願いします!って言えなくてね……」
「おお、そうじゃ、それなんじゃ!本当に参ってしまうんじゃ。精神的にこっちが参るんじゃ!」
と言ったおじちゃんの語気が、あまりにも強くて、ああ同じ思いだったんだなあとしみじみ感じました。
「食べ物も、食べられなくなっているみたいで」
「そうじゃ、そうじゃ!おばちゃんも同じじゃ。つらくてのう、神経に来るんじゃ」
同じことを経験した人の実感がこもっていました。
「しかしのう、こればかりは考えても仕方がないことじゃからの。もう考えたらいけん!体の方が大事じゃぞ!」
* * *
あまりにも周囲も自分もワーワーして、嵐のような日々でしたが、今あらためて改めて調べてみると、東京オリンピックは7月23日から8月8日だったんですね……。
もう、一体何があったのか、ほとんど記憶に残っていない日々です。
一か月も経つなんて信じられないぐらい怒涛の毎日でした。
母のことは結論が出ないままですが、わたしの家事が復活したことで、オムレットくんに変化が出てきました。
わがままになってきたのです!
しかし、オムレットくん、これまで非常に体の調子が悪くなっていました。
特に、四十肩(五十肩?)がひどく、病院に行っても治らず、薬からステロイドの駐車、ヒアルロン酸の注射と、しだいにレベルも上がってきました。
夜に痛い痛いと悲鳴を上げて起きることもあり、本当にかわいそうでした。
土日のお料理がオムレットくんの担当になっているのも、何となく負担が大きいのではないかと思っていましたが、何しろ会社ストレスで起き上がれない状態です。
それもあって、せめてお弁当は頑張ってみてあげようとしたのですが、五時起きで会社でふらふらになるという逆効果。
それが、土日のお料理も復活、徐々に家の中も片付いていき、お弁当も作れるという状態まで復活したのです。
すると、目にみえて、オムレットくん、肩の痛みを訴えることが減ってきました。
これが治療の成果なのか、ストレスが少し軽減されたからなのか、まったくわかりません。
でも、よくいう「肩の荷がおりた」というものなのではないかなあと思います。
それだけですめば良かったのですが、オムレットくん、弱っていたのが少し復活してきて、元気になってきてしまいました!
無駄に元気になったので、土日も、わたしが料理をしている周囲をウロウロして、あれこれと口を出すようになってきました。
やり方がちがう!そうじゃない!
それはこう切るんだよ!
という感じです。
(本物の姑はまったくうるさくありません)
う~~~ん。
これはまかせた方がいいのだろうか?
それとも、元気になってよかったね、ですませるべきなのだろうか?
これ、「私がまだ働いていて、元気になっている」と思っているから、こうなってるのでは?
とても、辞めます☆なんて言えない雰囲気です。
また具合が悪くなったらどうしよう。
たぶん、これまでつらかった分、甘えているんだと思います。
ちょっと様子見だな…と思っています。
お掃除と料理
さて、仕事もやめ、おばあちゃんにも会えないとなると、やることは一つしかありません。
お掃除と料理です。
これがこんなにも、時間を取るものとは思いませんでした。
あっという間に時間が過ぎていきます。
しかし、恐ろしいほど健康的にはなりました。
朝も、五時起きなんてラックラクです。
今のところ、オムレットくんの弁当、毎日欠かさず作ることが出来ています。
このあとに、つらいパワハラ場面に一日中つきあって、グッタリとなることがない、となると、5時だろうが、たちまちぱっちりと目覚めることができます。
人間なんて現金なものでした。
まあ、今だけかもしれませんが、お掃除も洗濯もバッチリです。
ずっと以前、専業主婦の人がPTAの関係で、うちに来たことがありましたが、それは午前中で、わたしは食器を洗っていませんでした。
すると、
「まあ、洗い物してないじゃない!こんなに残しちゃって!私が洗ってあげようか?」
うーん。
まるで、よくあるコミックエッセイのイヤミな姑のようだ。
あまり考えることなく、ポンポン口から出してしまう人で、悪気がないのもわかっているので、スルーしましたが、こうしていまだに思い出して、こんな所に書いちゃったりしているあたり、けっこう根に持っていたのかもしれません。
* * *
オムレットくんも、「お弁当を作ってもらうこと」というのに、だいぶ慣れてきました。
前は、「おはしがない」「袋がない」とか、これまたコミックエッセイに書かれてしまいそうなダメ夫のような台詞をたくさん吐いていましたが、最近は袋をおいてある場所も覚えて、だまって自分で入れています。
ほったらかしにしていると、自分でやる。
これがいつまでも「おはあしは?」「袋は?」とされていたら、それはいらいらするかもしれません。
しかしです。
子どもたちが、いつまでも家にいるのです。
というのも、コロナがあまりにも拡大してしまったせいで、夏休みがのび、さらにリモート授業になってしまったのです!
これはけっこう、厄介です。
普段なら、塾に行けとか、図書館に行けとか言って追い出しますし、わたしが家にいないと、何となく子どもたちも外に出てしまっていました。
しかし、今は、家にずーーーーっといます。
行けと言ってもまったく行きません!
もしかして、甘えているのかなあ。
コロナもあるかもしれませんが、やっぱり外で働いている方が自立心はつくのだろうか。
失業手当がもらえる間は、少し休んで家にいたいと思っていましたが、先行きも不安だし、案外はやめに決まってしまうかもしれない。
とりあえず今は、お弁当を作って、朝ごはんを食べ終わった頃に洗濯物が出来上がって干すことができるというよろこびをかみしめています。
* * *
そんなとき、電話がありました。
今度は施設からではなくて、往診してみてもらっている医療センターからです。
最近、とみに食事をとらなくなっていること。
少しずつ、起き上がることが少なくなっていること。
経口の栄養剤は使っていますが、このまま、取らない状態が続けば、それほど長くはもたないこと。
そして、もし何かあった時は、エンジェルケアといって、きれいに体をふいたり、お化粧をしたりすることを要望しますか、とたずねられました。
二回目に会いに行ったときの、般若になっていたおばあちゃん。
この出来事は、相当に参ってしまっていました。
開けても暮れても、やっぱり会いに行かないと、と思ってしまいます。
でも、今回ばかりは、介護施設もかたくなです!
あまりにも感染が拡大してしまっているので、仕方ないとも思うのですが…。
それに、最後の引継ぎの大騒ぎが重なって、もうめちゃくちゃになっていました。
さて、辞めた時から二、三日たって、しかも医療センターからこのような電話をもらい、私は考え込みました。
どうしても会わせて欲しいと、介護施設を統合している本部に電話するべきか否か。
クワガタとアレの話
虫好きのオムレットくん、よく山にクワガタ採りに出かけます。
古く放置された神社の境内などです。
夜は危ないからやめなさいと言っているのですが、虫の集まる良いスポットを見つけたらしく、今年は特に熱心にクワガタを取って帰りました。
こういう子供の心はいつまでも変わらないらしいです。
一度誘われて付いて行ったのですが、それはそれは虫もすごいし、夜の神社なので薄気味悪さも半端なかったです。
この日は早く帰ってきたので、どうしたのかと聞くと、
「先客がいた」
と答えます。
「真っ暗で、車だけが止まっていて、人はいないけどまだボンネットが暖かかった」
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それは怖い。山の中の神社の境内です。
「急いで車に乗って移動して、10分後に戻ってきたらもう車は無かった」
・同じように、虫を取りに来た人
・不法投棄
・何らかの犯罪
怖い怖い。
いくらでも考えられます。
「こっちが車止めて中にいる時、出くわしたら大変だよ。もうやめときなよ」
「今年はもうオフシーズンだから行かない」
オムレットくんが捕ってきたクワガタは、夜になるととても元気になります。
カサカサいっているのであー生きているなと分かります。
ブーン、ブーン、と飛ぼうとして、虫かごにしきりとぶつかります。
カサカサ、ブーン、ブーン、バシッ、バシッ
と、夜はいつもこうです。
はじめはうるさかったのですが、生き物のことですし、次第に慣れてきました。
* * *
その日、私は久しぶりにブログを書こうとしていました。
(ゴリラさんや、白くまさんのわるくちです)
みんなが寝付いた後に、パソコンを開きました。
テレビの音や人の声がしていると、全く考えがまとまらないのです。
するとカサカサいう音が聞こえます。
クワガタが起きたのかな。
しかしなんだか変です。
カサカサ、ブーン、バシッ
という音が、奇妙に近いのです。
最初は気のせいだと思っていましたが、その音は、部屋に隣接した廊下から聞こえてきます。
いや、おかしい!
廊下に出てみましたが、特に何もありません。
今日に限って、オムレットくんもいびきをかかず、妙に静かです。
洗面台の方に行ってみると目の前を何かがふっと横切りました。
ブーン、バシッ
明らかに!
アレの大きさ、黒さ!
ヒィエエエエエ!
叫び出したいの抑えて、こちらは田舎育ちのプライドがあります。
そこら中に電気をつけて調べてみました。
そして、ちょっと思い付いて、虫かごを見てみました。
扉が全開に開いています!
おい~!オムレットくーん!
困るよこれ!
これは、どうやらアレじゃないようです。
ならば、そこまで恐れることはありません。
またブーン、バシッ、と廊下で聞こえます。
今度こそいました。
クワガタです!
2ひき逃げ出していました
捕まえてカゴに戻し、ゼリーも足しておきました。
淡々と書いていますが、神社の気味の悪い話を聞いた後だったので、あるはずのないところから奇妙な音が聞こえる恐ろしさ。
それはそれは怖かったです。
叫び出さなかったのが不思議なぐらいです。
次の日に、オムレット君が、
「また行こうかな~」
なんて言います。
「もうダメ!もうトラウマだよ!クワガタを見ると、あの、ブーン、バシッ、という音が廊下から聞こえるような気がする」
「正直な話、山で木を見ていても、何か黒いものがたくさん動いているのは捕まえてみるまで、クワガタなのかゴキブリなのかまったくわからない」
「え…。山にもゴキブリいるの」
「たくさんいる」
ぐえ~!
しばらくクワガタは勘弁です。
今度は般若
「とても元気でいらっしゃいますよ」
ドキドキしながら、母に顔を見せます。
ちなみに、介護施設はもうとっくにワクチンは二回とも終わっています。
あちこちで聞くことですが、ほとんどのかたがかかる、二回目のワクチンのあとの高熱や体調不良、お年寄りはほとんどないのだそうです。
施設も同じで、体調不良で参ってしまったのはみんな、介護士さんの方だったそうでした。
前に見た時の、とても和やか、仏様みたいな顔をしていた母、そのイメージがあったので、とても会うのが楽しみでした。
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少し遠いのに、私の顔を見た途端、母の顔がさっとこわばったのが見えました。
はっきりと認識したようでした。
般若だ!
怒りと驚きとが一緒になった、すごい顔をしていました。
髪の毛もさっと逆立っているように見えました。
とても不愉快なものを見たという感じです。
怒ってる。
やっぱり怒ってるんだ。
と、瞬時にそう思いました。
コロナで会いに来れないことなんて、おばあちゃんには分からない。
こんなにほったらかしで、捨てられたと思っていたに違いない。
「誰?わからん!」
お母さん、と呼びかけるのも、ドキドキして胸が痛くなりそうでした。
介護士さんが、
「娘さんですよ」
と呼びかけてくれますが、
「マスクつけてるから、誰かわからない」
ずいぶんはっきりした声です。
ちっともボケている風ではありません。
「誰かわかりませんけど、さあどうぞ、帰っておくれ!」
きっぱりと拒否して、手を振りました。
「娘さんですよ」
「知らん。わからん。マスクしてるから。でも、そのことと、私の娘であるっていうのはまた別の話!」
すごい、はっきりとした声でした。
ピシャッと、叩きつけるように言います。
それからは、
「知らんわからん」
の繰り返しでした。
おばちゃんのことを話してみようとします。
妹の名前なら憶えているだろうか。
「知らん!誰」
これは……ついに来たのだろうか。
忘れてしまった……?
母は、取り付くしまもなく、車椅子に座っていたのですが、何と一人で立ち上がって、廊下を歩いて部屋に戻ってしまいました。
介護士さんがおいすがって、腕を取ろうとしますが、ぱっと拒否してすごい勢いで振り払って歩いていくのが見えました。
小部屋に戻ると、ケアマネさんが気の毒そうに言います。
「これは、誰もが通る道ですから。私の父もね、わからなくなって…」
そうですねとしか答えられません。
痴呆のために、母が私を忘れてしまったという意味であることはわかります。
しかし、帰り道に考えました。
車の中で運転しながら、一人なので、声が出ました。
「もー!だから!怒ってんじゃん!やっぱり!会えないから!」
どうしても私には、母が私を完全に忘れてしまっていたとは考えづらかったです。
あの怒りの表情!
母は生きてるんだ。
半分、生き仏になってしまったような、優しくて美しい母は、どこかもう半分天国に行ってしまったみたいでした。
これが、最期を迎えるための準備なのかと、奇妙に寂しい気持ちになりました。
けれど、怒っていて般若のような顔をしている母は、あまりにも懐かしく、あまりにも身近でした。
母の中に感情が生きていて渦巻いているということをはっきりと感じさせました。
そして、やっぱり寂しかったんだ、母は会いたかったし、薄情者とわたしを怒っていたんだと、思い知ったような気分でした。