今日もまた違う一日

今日もまた違う一日

おばあちゃんが認知症になった時のお話です。

はじまり 4

母が認知症になってから
認知症関係のニュースに注目するようになりました。

headlines.yahoo.co.jp

ちょっと前のニュースですが…他人事ではありません!

 

 

 

おばあちゃんが認知症になったお話 → 目次

 


~~ はじまり 4 ~~

母からの電話に出ると、昨日の異様な雰囲気はきれいに消えていました。
不安そうではありましたが、いつもの普通の母でした。

 

そして、
「昨日、あたしあんたに電話した?」
と聞いてきます。

 

何て返事をするか迷いました。母はこちらが返事をする前にかぶせるように言いました。
「昨日な、あたしおかしくなってたんよ。何か変なこと言わんかった?嫌やわ、すごい嫌な気分。変になってた。気分が悪い」
「何か言ったかな?」

 

思わず空とぼけました。不安が抜けていき、ほっとしたのを感じました。良かった。とりあえずは良かった。
私もなかったことにしたいと思いました。

 

「何も言わんかった?忘れてな。あのな、絶対誰にも言わんで。絶対よ!
「わかった。わかったよ。大丈夫」

私は、あれから言おうと準備していたことを言いました。

「それでね、お母さん。前から約束してたやんか。今年の夏休みには、一緒に老人ホームを見に行こうね」

父はすでに亡くなっていて、母はずっと一人暮らしをしています。

ちなみにこのとき、わたしはぜんぜん、「認知症」「もの盗られ妄想」などの言葉はまったく思い浮かびませんでした。

母は昔から割と猜疑心の強い人であったので、何か誤解があるか、喧嘩するかなりトラブルがあって、そういう事を言い始めたのだと思っていました。

そして、同居にしろ施設にしろ、こちらに引き取る時期が近付いていると、それだけは準備始めなければいけないのだと、思いました。
頭では。

母が心配。
それ以上に、どこか心の奥で考えていました。
そうしないといけないのはわかっているにしても、少しでいいから…。
時期を少しでも、できるだけ引き伸ばしたい…。

オムレットくんやこどもたち、会社の人たちの顔がつぎつぎ、浮かびました。
そこに、この性格のきつい母が入る余地はありませんでした。
実の母なのに。

「とりあえず、お母さん、三月に二泊三日でこっちに来るんだよね?」
「うんそう。行くよ」
「その時に、夏に探すことちゃんと話そうね」
「そうねえ、わかった。そうするわ」

 


→→ はじまり 5 に続く

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