はじまり 5
寒気がして、喉が痛くて、咳が出ているのは…
はっ、これはまさか、花粉症!?
(ではなくて、風邪ひいたみたいです)
~~ はじまり 5 ~~
私はオムレットくんに話をしました。
お母さんがちょっと変だと思う。だいぶ年かもしれない。
夏休みを目途に、本格的に引っ越しを検討しないといけないと思っている。
そして、
「でも一緒に住むのは絶対にわたしが無理なので、同居はしないと思う」
と言いました。
オムレットくんはまだ、ぴんと来ていないようでした。
それから、こんなことを言いました。
「だけどさ、お義母さんすごいよね」
「何が?」
「三月にこっちに来るんでしょ?関東までめちゃくちゃ距離があるのに、一人でよくできるよね!自分で時間を調べて、切符を取って、乗り換えてバスにも乗って来るでしょ?うちの母なんてな~んにももできないよ」
母は、自称・お嬢さん育ちなので、何でも他人が自分の面倒を見てくれると思っているところがあります。
そんな母のことだから、みどりの窓口に行って
何月何日にドンッ!
これで行ける切符にしてッ!
ってやってるだけだと思うけどな~…。
そういえば確かに、伯母なんて母より若いのに旅行なんて考えられないみたいだし。
そういう人は、お年寄りの世代に多い気がする。
それに比べたら母は、何度もひとりで東京まで行き来している。
そうかあ、あれだけ意志が強くてしっかりしてる人にいきなり施設といっても抵抗しそうだなあ。
母の性格では、人間関係のもつれを起こしそうだし…。
これは一番ありそうで、悩ましい所でした。
三月に母がやってきました。
三時間はゆうにかかる長旅です。
たしかに、この年(82歳)ですごいなあ。感心しながらほめたら、得意げにしています。
同窓会が東京であるらしく、
「このハガキの場所にいくんよ」と見せてくれました。
「うわぁ、何これ、どこ?わかりにくそうな場所」
「ああ、それならこんな感じで行くといいですよ」
オムレットくんが、乗り換えや電車の時間をハガキに書いてくれました。彼は関東出身なので、土地勘があります。
帰ってきてから笑いながら母は言いました。
「行けたは行けたし、ちゃんと着いたんやけど、時間を間違えてな~早すぎたの!大変やったわ」
「えー皆には会えたの?」
「会えたよ~、楽しかった~!」
ほっとしました。
ここまで、何のフォローもせず、まったく手を出さなかった私。
心のどこかで、母がどこまで「ぼけて」いるのか試したいと思っていました。
自分でも冷たいと思いますが、できるだけ引き伸ばしたい、まだ関わりたくない、という気持ちがありました。
「それでな、お母さん。いきなり施設っていうのも何だし、ここの近くに部屋を借りて、引っ越してきたらどうかな?」
「部屋?アパートみたいな?」
「うん、賃貸のアパートか何か。うちが近かったらすぐに行き来できるし、いいんじゃないかな?」
「ほんと、それがいいわ、そうして!」
「じゃあ、夏休みまでに目星を付けておくから、夏に部屋を見てまわろうね」
この時はじめて 私は母の年金額を聞きました。
今まで母がいったい父が死んでからどのくらいの収入でどうやってやりくりをしているのか、まったくわかりませんでした。
ほっとしたのもつかの間。
夜に、例のごとく言い合いになりました。
→→ 産後の思い出 1 に続く