今日もまた違う一日

今日もまた違う一日

おばあちゃんが認知症になった時のお話です。

通帳ふたたび 1

おばあちゃんのお弁当日。
オムそばちゃんと一緒に届けました。

おばあちゃんの部屋でアルバムをめくりながら娘が
「わぁ、おばあちゃん、びじ~ん!」

母はたいへん機嫌がよくなりました
「言うちゃすまんけど、おばあちゃんモテたんだぞう!✨」
と得意げに言ってました。

 

 

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~~ 通帳ふたたび 1 ~~

 

この時期は仕方がないことなのですが、決算に学校にと、猛烈な忙しさが続いていました。
ひどい風邪をひいた上に仕事も休めず、ひどいめにあっていました。

「いいの、もう大丈夫!郵便局に電話をして止めてもらったからね、平気や」
「だめだよお母さん!!」
「ええ、なんで?」

なんでって…。

 

落ち着け、落ち着け。これではだめだ。
ヒートアップしているまま、話をしてはだめだ。
そんなのまずいことはわかっていました。

 

「ご近所さんだって通帳なんてプライベートなもの、探してくれなんて頼まれても迷惑だって思うでしょう?」
「そうかな?そうねえ、そうやねえ本当に」
「どうしちゃったの?どうして?そんな分別もなくなっちゃったの?だめじゃないの!」

 

よく言われるように、母がぼけたのを認めたくないというのは少し違っていて…。
変化に対応できないという感じです。
こどもは、成長し色んな事が出来るようになって、手が離れて行きますが、逆に手がかかるようになっていくのです。こちらは逆です。

「ご近所さんに頼んだりなんてしちゃだめ!!頼るにしたって、限度があるでしょ。迷惑かけないで!!」

止めないといけない、責めちゃだめだ、そう思うけれど、頭が、口がついていきません。

矢継ぎ早に責め立てました。
「絶対に、絶対に、ご近所さんに頼んだりなんてしちゃだめ!!」

 

じゃあどうすればいいのか?
母だって泣きたい気持ちだったと思います。

 

普段からおとなしいおばあちゃんでしたら、もう少しセーブできたのかもしれません。これはおかしい!と思ったでしょう。
しかし、産後の思い出にも書いたように、普段から人を頼ることが当たり前、人の都合なんておかまいなし、という所があった人なので、その延長線上にしか思えませんでした。

 

もっと落ち着いている時にゆっくりたずねようと思っていたことがありました。
感情的になってこじれるのではないかと思いながらも、口にしました。

「通帳、通帳っていうけどね、お母さん。
一体通帳っていくつあって、いくらぐらい入っているの?
ちゃんと全部!きちんと教えて!」

それまで私は母の預金額など一切知らず、聞いたこともありませんでした。
母は、お金のことを口にするのは下品ではしたなく、恥ずかしいこととする考え方でした。

しかし、避けては通れない。
いつか言わないといけない。聞かなければならないと思っていたことです。

最悪のタイミングでした。

 

 


→→ 通帳ふたたび 2 に続く

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