馴染むために 3
認知症の承諾とは何だろう。
今のわたしにはとても重い問いかけです。
介護をするのが難しいといっても、やっぱり最終的には家族しかないなあと思う部分もあります。
なぜなら、その人の歴史を知っているのは家族だけだから…。
責任というのとは違う、もっと強い血の絆みたいなものを感じました。
ブログを作って良かったなと思います。
いいことも悪いことも、母の歴史をたくさん思い出しました。
~~ 馴染むために 3 ~~
認定調査までに起きた面白い(…と言っては何なのですが)騒ぎは二つ。
一つは、警察にお世話になったことです。
その頃、何度か施設からバスでうちにきてもらっていました。
バス停は施設のすぐ前にあり、乗るのはたやすいです。
それで、こちら側のバス停で私は待つことにしていました。
よい刺激になると思っていたのですが、その日はいくら待っても母が降りてきません。
おかしい。さすがに待ちすぎる。
母を逃してしまったかもしれない!
青くなって家とバス停の間を右往左往して探していると、電話が鳴りました。
うちの一番近くの交番です!
けっ、警察^^!!??
さーっと血の気が引いて、素っ頓狂な声が出ました。
「母ですか!?母が見つかったんですか!?」
警察の方は、面白そうな声で明るい調子でした。
母がみずから交番を訪れて、娘の家がどこかわからなくなった、と話したみたいなのです。
「携帯に娘さんの電話番号があったので、こちらからお電話しました。交番でお待ちしてますね」
バス停、家、交番、私が探していたあたりとすべて近所でした。
すっ飛んでいくと、母とおまわりさんが仲良く笑いながら談笑していました。
ニコニコしながら
「面白いお母さんですね!たくさんお話していたところです」
と言われます。
母も上機嫌です。
「ずっとね、お茶をいただいて楽しくお話していたところなの!面白かったわ~、ありがとうね!」
平謝りして母を連れて帰りましたが、帰り道で私までおかしくなって笑ってしまいました。
昭和のほのぼのエピソードみたいだ!
「おまわりさんとどんなお話したの?」
「娘がこっちに来ててね、一緒に食事をするんで待ち合わせをしたって話をしたよ。あんたの家ぐらい一人で行けるわ!と思って行ったんやけど…途中でどうもあやしくなってきてね。交番あるわ!と思って入ったの」
交番は距離は近いですがちょっと方向が違います。
ふと思い出しました。
そうだ、今の家に移る前、ごく近くですがこの交番のある道沿いに家を借りていました。
オムレットくんと結婚してくるみくんを産んで、母にもよく来てもらった道沿いです。
もしかすると、その道のことを母は覚えていたのかもしれないな。
帰り際、車に乗りながら、
「あんたわたしの子供やね?まごかな?」
と言います。
「お母さんかと思ってしまう。あんたがお母さんのよう」
相変わらず「帰る」の電話はありますが、ホームではさほど騒いでいないようです。
午前中の不安定さを薬で抑え、午後はなごやかに過ごせるというスタイルが定着しつつあります。
・「昨日もお医者さんが来たが、私の頭にも体にも何の問題もなくて安心した、これで地元に帰れる」
・朝電話、元気に明るく「明日か明後日に地元に帰ろうと思うので、あんたに電話しておかなければならないと思ってかけた」
一見、何も変わらないようではありますが、向精神薬半錠を定期的に朝に飲むようになってから、「今日帰る」→「明日か数日中に帰る」に変わってはいます。
危険な感じは、やはり一~二度ありました。
夕暮れ時になると、「夜が怖い」と言います。
→→ 馴染むために 4 に続く