今日もまた違う一日

今日もまた違う一日

おばあちゃんが認知症になった時のお話です。

家を処分する日 3

 お買い物をしたお店の駐車場で
「なかまがいる」
とオムレット君がつぶやきます。
「えっ何のこと?」
「全く同じとこがへこんでる」

 

ぎゃー!ほんとだ!!
先日、私がぶつけた所とまったく同じ個所がへっこんでいます。

 

おまけに車種も同じです。
その位置、低いポールだと気が付かないよね!!
気もちちわかる!!
という気分になりました。

 

 

はらぺこあおむし エコバッグ

 

おばあちゃんが認知症になったお話 → 目次

 

~~ 家を処分する日 3 ~~

 

 

地元の駅に近づいてきました。
なつかしい景色です。
あまりにも変わってないので驚きでした。

 

それと、(これは嬉しいことなのですが…)割と活気がありました!
新しい施設も立っているし、人もいます。
私は、ちょっとネガティブに考えすぎるあまり、「さびれかけた田舎」ぐらいに考えてしまっていたようでした。

 

まだこの町は生きてる、大丈夫!と思ってちょっと嬉しくなりました。

 

母は、外を見ながら
「ここはどこかな?」
と聞きました。

 

衝撃を受けました。
あれ?覚えていない?まさか。
あれほど帰りたがっていた場所なのに、覚えていない?
「ここ、〇〇でしょ…?」
と恐る恐る地元の名前を出すと
「そうやねえ、〇〇やね」
と返事が戻ってきましたが…。

 

荷物を宿に置いてから、レンタカーでまっすぐうちに行きました。
何もかもからっぽのうちです。

 

母は、ショックだったりがっかりしてしまったりということはありません
ただ、決然とした口調で
「何もかももとに戻さんとね!」
と言います。

 

ひとこと、ひとことのすべてが私にはダメージです。
ガックリきてしまって、訂正する気持ちも湧きません。

 

工務店さんが顔を出してくれました。
すると、母は突如としてしゃっきりとなりました。
さっきまで「もどに戻す」と言っていたことなど、忘れたようです。

 

「あんたに頼んで本当に良かったわ~!ありがとうね」
「奥さん、お久しぶりです」
「いい値で売れたんやろ?安心やな?」
「はい、そりゃあもう、頑張らせて頂きました」

 

 

お墓参りをしてからのぞんだ契約は予想外にスムーズにいきました。

 

売買のお相手の方は、はためにもわかるほど、ものすごく緊張していました。

 

うちが高齢で認知症の診断を受けており、何があるか最後までわかりませんと聞いていたのじゃないかなあ~??と思います。
母が割としっかりした足取りで入ってきて、ニコニコして愛想よくしているのを見て、一気にほっとした様子が伝わってきました。

 

それほど最初の緊張ぶりがすごかったです。

 

母は二度、三度、記憶が混乱して迷っている様子を見せました。
ですが、迷いながらもゆっくりとですが、自分の名前を書きました。

 

ああ~、書いちゃったなあ。

 

お膳立てしたのはすべて私なのですが、なんともいえない気持ちになりました。
私の生まれ育った場所が、帰る場所はもうなくなっちゃった。

 

亡父に無性に会いたくなりました。
それと同時に、オムレットくんとこどもたちにも今すぐ会いたくなりました。

 

 

→→ 家を処分する日 4 に続く

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