さいふがない! 2
そこにガチャッと扉を開ける音がして、軽く飛び上がってしまいました。
くるみくんが帰ってきたのでした。
「くるみ君、ちょっと話を聞いてくれる!!??」
状況を説明すると、くるみ君は家の中を一回りました。
私がいかにも置きそうなところを見てまわっています。
よく知ってるなーと思います。
オムレットくんは動線という言葉が大好きでよく使います。
くるみくんは私の動線を完璧に把握していてその動線沿いにあるかないか探しているようでした。
「ないね」
ないことを確信したくるみ君は、一緒に車の所に行ってくれました。
車の中をよく探してくれました。
シートの下は私も探しましたが、くるみくんは念入りでした。
後ろのトランクまで開けてみてくれましたし、外に出て車の下まで探してくれました。
ですが本当にありません!
くるみくんもだんだんあせって来ました。
私はというと、本当にないのが確認できたのと、一人ではなくなったのでちょっと落ち着いてきました。
カバンに入れずに助手席のシートの上に置いたのも確かです。
そして、むき出しのままだとまずいので持って行ったのも確かです。
ここまでは確実です。
「カード止めた方がいいんじゃない」
「まって、やっぱり絶対に泥棒じゃないと思う」
二人でもう一度家に戻りました。
「本当にどうしたんだろう…」
マンションの裏口は駐輪場になっていて、そこを抜けるとアルミフレームの扉がついています。
マンションに入ろうとすると、くるみ君がぎゅっと私の腕をつかんで指差しました。
暗い灰色の影になったすみっこに…!
さいふが!
落ちていましたーっ!!!!
駐輪場と扉の隙間に落ちていました!
洗濯物を抱えて歩いていた時にここで落としたのでしょう。
よくあんなすみっこに落ちているのに気がついたなと思います。
中身も無事でした。お札も抜かれていません。
わたしが落としたのは明らかです。
くるみ君ー!!本当にありがとう!!
絶対にお前がいなかったら見つかってなかったよ-!!
そして、私も「どこかに置き忘れ」ではなくて「落とした」ことに妙に&安堵していました。
認知症じゃなかった…。落としたんだ。
良かった。
って全然良くないですが!!!