コロナで失ったもの
施設を訪れている間、みなで深刻な顔で母について話していましたが、こんなことを話している途中でも、母はぴょこぴょこ立ち上がりあっちにいったりこっちに行ったりしようとして大変活動的でした。
全く歩けなくなっている様子もありませんし、寝てばかりいた人とも思えない様子です。
元々エネルギッシュな人なんですよと言ってみましたが静止しないと厳しいほどでした。
お医者さん達が引き上げるのと合わせて私もさりげなくすすすーっと引き上げさせてもらいましたが、母が追ってきました。
やっぱり来たかなと思ったのですが、そこで母は立ち止まり戻ってきました。
外に出るのが不安な様子が見えました。
また、私を邪魔しちゃいけないと気を使ったのかもしれません。
母と「普通に」話し合える時間は、どんどん小さくなって、消えていきそうになってます。
出来る限り、顔を見せてあげたい。
今回、お医者さまが一緒にと言われたのと、あれこれとお話があったので施設には入れましたが、基本特別扱いは出来ないんじゃないかと思います。
私も、オムレットくんの微熱の件もありますし、外から何らかの菌を持ち込まないかと言われると、まったく自信はありません…。
こういう時に、親孝行な人ならば、引き取って面倒をみたりするのかなあ？
いざ、引き取れるか？となるとそれは全くもって無理な私です。
こんなにも会えないでいる間に、母はさぞ、見捨てられたように感じていただろうなあ…。
コロナで面会謝絶になり、強制的に会えずにいる間に、わたしは自分をもう一度立て直すことができました。
オムレットくんとのみぞも、やっと埋まってきたかなと思う現在です。
でも、母のみるみる衰えていく過程に背中を向けて、目をふさいでしまってもいたなあ。
変化が急すぎて、ちょっと受け入れがたいような、半分ほっとしているような、複雑な気持ちです。
あれほど困らされてきたのに、勝手なものです。
親子であるが故の葛藤です。
「自分の判断力はいつまでもしっかりしていない」
というのは、しっかりされている方にとって、自分の否定に聞えてしまうだろうと思います。
「命はいつまでも続かない」というのと同じように、受け入れがたいです。
母もあれほど抵抗していたけど、こうなってしまった…。
あの怒りみたいなのは、認知症の病状の一つと言われるけれど、穴にひきずりこまれるように失われていく判断力や弱っていく思考に対しての、死に物狂いの抵抗だったのかもしれない、と思うようになりました。
無理を承知で、診察のときには今日のように同席してもらえるように頼んでみようか…。
ここまで広がってしまっては、誰からうつったということは言えないような気がします。
ちゃんとマスクをつけて生活して、お熱を測って、手洗いするしかありません。
診察にくっついて行けたとしても、１ヶ月に１回です。
前までは、ほぼ１週間に１回はなるべく顔出しをしていたので、そりゃあ、母もそりゃないわと思ったでしょう。
これはもう、色々考えても仕方が無い！
まだ、月１の（骨折のあとの）通院がありますので、会うことは可能です。
出来る限りのことをして、ある程度割り切るしかありません。
そして、ちょっと思い出したことがありました。
骨折したときなのですが、施設のかたに、母のカバンを手渡されました。
赤い肩掛けの、母が肌身離さず持っていたカバンです。
「中に現金が入っていたんです。びっくりして！」
財布から現金は取っておいたと思っていたのですが…。３万円も入っていました！
いったいどこから入り込んだやら、はて？
（施設は入居のとき、現金や貴金属類などは持ち込み厳禁です）
カバンを預かって、お財布の中のお金はともかく、施設のかたが大事なものなのではないかと言っていたキャッシュカードなどは、もうとうに使えなくなっている父のものばかりでした。
これらはフェイクのために入れておいたものです。
お金はどうにもどこから現れたのかさっぱりわかりませんが、このカバンがなくなったのも、気力がなくなってしまった原因ではないかもしれませんが、がっかりしているかもしれない。
キャッシュカードのことなども説明の上、なるべく早めに、母の所に持って行ってあげよう、と思いました。
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