先生の妙な態度
今日の検査でわかるはずの「しこり」は、おそらくこれは癌なのだろうという漠然とした予感があります。
しかし、もう母は年です。
若い人なら進行が速いと言うけれど、年をとってからならば、まだまだ進行は遅いのではないか…。
それでなくとも、二回もの癌を克服している母です。
それでも癌は癌。
致命傷になっている可能性もあります。
何か決定的なことを聞かなければならない気がする…。
やっぱり待つことは待つので、母の手を握って待っていました。
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ここからは、つらい話になります。
しかし、何がつらいかと言って、あまりショックを受けてもおらず、心が平静なところが一番つらいです。
中に入ると、先生が厳しい顔をしていました。
そして、母を車椅子のままで、外に出してしまいました。
そこで、もうわかってしまいました。
コストコに行ってみたり、ゲゲゲの女房を見てみたり、色々としてはいましたけど、でも考えていないはずもなく、ずっとずっと考えていましたし、もちろんわかっていました。
去年の健康診断では、何も出なかった…。
コロナもなかったし、母も必要「以上」にチャカチャカと元気でした。
ほぼ一年です。
コロナで会えない六カ月、そんな面会謝絶なんて、どんなに認知症になっていたとしても、どんなにわからなくなっていても、そんなの耐えられるわけないのでした。
私もわかっていました。
わかっていたけど、私が立ち直るためにはこのコロナ休みは必要だった…。
コロナのせいに出来るので、逆にありがたいと思ってしまうぐらいです。
またものすごく(コロナを)やっぱり恨みに思う気持ちもふつふつとあるのです。
先生は
「あまりよくない内容です」
とだけ言って黙っています。
私は、もうそれで覚悟を決めたのですが、それからが妙でした。
先生は、なかなか説明してくれようとしません。
「個人情報ですので、あとはかかりつけ医さんにお話しておきますので聞いてください。こちらとしては今日は出せるお薬もないし、お話もありません。あとはかかりつけ医さんがよくわかっておられることで専門だと思うのでそちらとご相談ください」
私はすっかり戸惑ってしまいました。
「結果は、かかりつけ医さんに聞くということですか?ここでではなくて?」
「あとは向こうですので!」
切り口上で言われます。
「どのように暮らせばいいだとか、アドバイスなどもなしですか?」
「アドバイス?うぅ~ん?」
先生、すごく困惑した様子で、しかめっ面してこちらを見てきます。
何、どういうこと!?
そしてどういう態度なんだろう?これは?
私はここで、かなり頭にきてしまいました。
目の前で私もすごいしかめっ面をして、腕組みして…要は、臨戦態勢に入ってしまいました。
「では、いつその結果を届けて、いつ説明を受けられますか?これからお休みもありますよね」
「いつ?うーん。休み明け?」
こんな母の一大事であろうことを、おそらくは命にかかわる癌なのであろうことを、休み明けまで!?
かなりカーッと頭に血が昇ってしまいました。
どう言ってやろうかと血が昇っていながらも、考えていると…。
先生、不振そうな顔で
「施設の方ですよね?」
と聞いて来ます。
「違います。娘です」
「娘さん!?あー!ご家族!?そう!?それなら話は別です!ご説明します今!」
先生、仕舞いこもうとしていたカルテやら、CTやレントゲンの結果などを、慌てて取り出し始めました…。
この一幕があったので、私も頭にきてしまったあまり、ショックが少し薄れていました。
麻痺したような状態だったのが、少し正気付いていました。
涙も引っ込んでしまいました。
何か話の内容的に鬼押出しを思い出してしまいました…。
あの時の私は、まさしく鬼のような顔をしていました…。
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