複雑な気持ち
車を動かして、やっと病院から離れました。
母はまだ、赤いかばんをさがしています。
そんないつもどおりの行動が、何だかかえってまともに思えました。
そして、ふっと父のことを聞きました。
母の口から、父のことが出るのはずいぶん久しぶりです。
家いて、待っていると思っているみたいなのです。
やはり今日はすこし「戻って」いるのです
「おとうさんどうした!?」
「…」
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どう答えよう。
適当なことは言いたくないなあ。
「亡くなったよ」
「なくなった!?」
ものすごく驚きます。
「あらそう…」
悲痛な顔をしてます。
どんな時にも、あまりうまくない、へたな対応しか出来ない娘だなあ。
でもきっと、それぞれの家族の付き合い方というのがあるだろう。
うちはもう、こうしか出来ないのだろうな。
「少しだけ、お店に寄ってみようか?」
母が疲れてもいるし、どうかと思いましたが、これが最後かもしれないという気持ちもありました。
まだ、二週間という言葉がガンガン鳴っていました。
待たされたのですいてます。
ちょうど良いです。
ゆっくり過ごしたいですが、予想外に時間を食ったので、母も本当に疲れているようです
それでもよく店までの(わずかではありますが)しっかり歩いてくれました。
おそばも、ほんのわずかではありましたが、口にしてくれました。
二人とも、じーっと黙っていました。
でも、母は私が食べるのを見て嬉しいようです。
この前の、しかめっつらや嫌な顔はありません。
そうか。あの母の急激な痩せ方は、癌の痩せ方だったのか。
今になってみれば腑に落ちます。
母の昔の写真を見ると、やはり随分変わってしまったと思わなくもないですが、痩せても母はなんとなく、まだつやつやと少女のような美しさをずっと保っているところがあります。
86歳で、やせ衰えても容貌がおとろえないのはすごいです。
唯一、本当に年取ったなと感じたのは、骨折のときの病院で、入れ歯を完全にはずしているのを見た時でした。
歯は大事です…。
(そして、内科の先生が間違えたのも、よっぽど似てなかったんだともう一度思い出して、また複雑になりました)
施設の方に説明をし、これからのお話をかかりつけ医さんとする算段をつけてもらい、やっと家に帰りついた時にはもう、ぐったりしていました。
しかし、不思議なことに普段のグッタリ具合が違います。
夕ご飯はもう、いい加減ですませるか、食べに行こうと思っていたのですが、何だか普通に作ってしまいました。
その後に、朝洗濯したのにまたたまりかけている洗濯物を干しました。
妙に体が動きます。
あの、どよ~んとした欝状態が訪れません。
認めたくはないですが、気付いてしまいました。
解放される、という気持ちがあります。
介護は先の見えない長いくらやみのトンネル、と言われます。
その「先」が何となく見えたのです。
喪失感よりも安堵感がまさっています。
心臓が痛くなった頃に、オムレットくんに、
「お母さんの方が先に死んじゃいそう。いかにもありそうなことだよ」
なんて言われていたな。
私が死ぬか母が死ぬかという。
母と娘とは 敵なのだろうか
今度は罪悪感に苛まれて、母が死んだら本当にひとりぼっちという気持ちになるだろうな、と考えます。
あれこれしたいことも制限され、何よりもあのコロナは本当に母には辛かっただろうな。
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