おじちゃんの話 1
夕方に、家の電話が鳴ります。
連絡は携帯電話が普通になった今では、家の電話が鳴ることはほとんどありません。
先生の連絡すら、携帯電話に直接かかってきます。
(連絡がつく電話番号を書くらんがあって、携帯電話の電話番号を書いています)
誰だろう。
ここのところ、オムそばちゃんのやめた塾からの電話がすごいです!!
オムそばちゃん、塾をやめる
このときの対応から、塾に対してもう恐怖心を抱いているので、電話に出ないでいるのですが…。
毎日2回ほど、非通知設定の電話と、塾の電話から二回、必ずかかってきます。
「くるみくん、出てくれないかな…」
と言って出てもらいました。
お母さんはコロナにかかったとでも言ってもらおうか、とまで思いました。(言いませんでしたけども)
そうするとくるみくんの大きな声が聞こえます。
「おー!もしやこの声は。お蕎麦のおじちゃんじゃありませんか。けいちゃんおじちゃんでしよ。俺だよ、くるみだよ」
いつも母に向かって行っているような細々としたやる気のない声ではありません。
きちっとした大きな声です。
「俺ね元気だよ。もう高校1年になりました。来年は高校2年生です」
けいちゃんおじちゃんからの電話でした!
おばあちゃんの大騒ぎをしていた時は受験の真っ最中でした。
おじちゃんがだいぶ年を取ったと言ったのをくるみ君はちゃんと覚えていてくれて、はっきりした大きな声で喋っています。
この子いつのまにこんなに大きくなっていたんだろう。
内気であまり喋らず、自分の気持ちを表すことも下手だと思っていたのに。
驚いてまじまじと見てしまいました。
小さいころにおじちゃんは本当にくるみくんを可愛がってくれました。
小さい頃の私やいとこ達は可愛がってくれたのと全く同じように。
そして下のオムそばちゃんが出来た時、こっちは元気でとても勢いがあるのですが、そんな妹の影でじっと黙っているくるみ君をの方を気にかけてくれました。
上の子と言うのは下の子によく消されがちなものですから、本当にありがたいと思っていました。
そうだ私のいとこで下の子がとても愛らしくって、その影に隠れるようになってしまっていたいとこがいたな。
その子のことも、おじちゃん本当によく見ていてかわいがってくれたなあと思い出します。
このコロナ騒ぎの最中です。
おじちゃんおばちゃんは一体どうしてるだろう。
以前話していて、とても不吉な予感がしていました。
今、見直してみると、それは一月のことでした。
あのとき、できればおじちゃん、もう負担もあるし施設に出ることは早く考えてと言ったけれども…。
おじちゃんは「いやいやそれでも自分が見ないといけないから」と言ってたなあと思い出します。
くるみくん、電話ではっきりと答えます。
「お母さんいるよ。お母さんに変わろうか」
電話をかわるとおじちゃんは本当に嬉しそうな声を出していました。
「くるみ、大きゅうなったなあ、わしはもうその声を聞いて嬉しくて嬉しくて今は涙ぐんどるぞ」
本当に家で一緒にいる私ですがなかなか聞いたことのないくるみ君の一面でした。
おじちゃん、元気づいたのかたくさん話をしてくれました。
それはとても辛い長い話でした。